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文献詳細

雑誌文献

胃と腸53巻1号

2018年01月発行

今月の主題 胃型形質の低異型度分化型胃癌

主題症例

H. pylori陰性胃底腺粘膜に発生した胃型腺腫由来の低異型度高分化腺癌の1例

著者: 堀江義政1 藤崎順子1 河内洋2 乾山光子1 赤澤直樹1 城間翔1 中野薫1 山崎明1 山本安則1 吉水祥一1 堀内裕介1 由雄敏之1 平澤俊明1 石山晃世志1 土田知宏1

所属機関: 1がん研有明病院消化器内科 内視鏡診療部 2がん研有明病院病理部

ページ範囲:P.101 - P.107

文献概要

要旨●患者は60歳代,男性.H. pylori未感染.前医で施行した上部消化管内視鏡検査(EGD)で胃癌が疑われ,精査加療目的に当科へ紹介となった.治療前のEGDで胃穹窿部に平坦隆起性病変を認めた.白色光観察では病変は淡い発赤調,強い発赤調,白色調の3領域から構成されていた.拡大観察では強い発赤調領域に一致して微小血管の口径不同を認め高分化腺癌を疑い,内視鏡治療の方針とした.切除標本の病理組織学的検索では,淡い発赤調領域はMUC6陽性細胞が主体の胃型(幽門腺型)腺腫から成り,強い発赤調領域にはMUC6とMUC5AC陽性細胞が混在する胃型形質を示す低異型度高分化腺癌成分を認めた.白色調領域はMUC5AC陽性細胞が主体であったが,構造異型・細胞異型は軽微で胃型(腺窩上皮型)腺腫と診断した.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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