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文献詳細

雑誌文献

胃と腸53巻11号

2018年10月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

広範な十二指腸潰瘍を示した紫斑のないIgA血管炎の1例

著者: 大川清孝1 上田渉1 青木哲哉1 佐野弘治1 宮野正人1 小野洋嗣1 中内脩介1 川村悦史1 山口誓子1 倉井修1 藤井英樹2 中村遼太3 山上啓子3 小野寺正征4

所属機関: 1大阪市立十三市民病院消化器内科 2大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学 3大阪市立総合医療センター総合診療科 4市立川西病院病理診断科

ページ範囲:P.1537 - P.1543

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要旨●患者は70歳代,男性.嘔吐,下痢,腹痛のため救急入院となった.感染性胃腸炎を疑い抗菌薬を投与したが軽快しなかった.7日後には腹痛の増強と発熱が出現し,CRPの上昇とAlbの低下を認めた.腹部造影CTにて十二指腸下行脚〜空腸の著明な壁肥厚を認めた.小腸内視鏡にて空腸上部〜十二指腸水平脚は剝離しかけの粘膜と広範な潰瘍を認め,十二指腸下行脚には島状の粘膜の残存がみられた.これらの画像所見と持続する腹痛から,紫斑はないもののIgA血管炎と診断し,ステロイド治療を行い軽快した.後日,凝固第XIII因子の低下が判明し,生検組織でIgA血管炎として矛盾しない所見と判断された.高齢者の紫斑のないIgA血管炎のまれな1例を報告し,考察を加えた.

参考文献

1)大川清孝,上田渉,佐野弘治,他.Schöenlein-Henoch紫斑病と消化管疾患.臨消内科 24:906-912, 2009
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5)原法子,中原礼子,原亜希子,他.アレルギー性紫斑病の3例.島根医検 41:44-49, 2013
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9)江 幹宏,梅野淳嗣,前畠裕司,他:血管炎による消化管病変の臨床診断─IgA血管炎(Henoch-Schönlein紫斑病).胃と腸 50:1363-1371, 2015
10)大川清孝,佐野弘治,末包剛久,他.腸管Behçet病・単純性潰瘍と他の炎症性腸疾患との鑑別診断─臨床の立場から.胃と腸 46:1032-1043, 2011
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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