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文献詳細

雑誌文献

胃と腸53巻4号

2018年04月発行

文献概要

今月の主題 腸管感染症─最新の話題を含めて 序説

腸管感染症─最新の話題を含めて

著者: 平田一郎1

所属機関: 1大阪中央病院消化器内科

ページ範囲:P.381 - P.382

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 “腸管感染症”の大半は腸粘膜に炎症を伴っていることより,“感染性腸炎”が同義語のように用いられることもある.腸管感染症は起因病原体によって細菌性,真菌性,寄生虫性,ウイルス性に分類される.また,臨床経過により急性と慢性に分けられ,細菌性腸管感染症の多くは急性の経過をたどり2〜3週で自然治癒傾向を示すため,欧米ではacute self-limited colitisと言われているが,サルモネラ腸炎やエルシニア腸炎は遷延化する場合がある.一方で,慢性の経過をたどるものとして,腸結核やアメーバ性大腸炎などがよく知られているが,他の寄生虫性腸管感染症でも病原体が駆逐されなければ症状は慢性的である.
 腸管感染症のうち日常診療でよく遭遇するのは,カンピロバクター腸炎,サルモネラ腸炎,腸炎ビブリオ,病原性大腸菌腸炎,エルシニア腸炎など,急性胃腸炎型の細菌性腸管感染症である.C. difficile(Clostridium difficile)腸炎やMRSA(methicillin resistant Staphylococcus aureus)腸炎は抗菌薬の多用による菌交代現象,長期入院者の院内感染や高齢者などの場合に好発する.サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)腸炎,MAC(Mycobacterium avium complex)腸炎,糞線虫症,イソスポーラ症,ランブル鞭毛虫症,クリプトスポリジウム症,真菌性腸炎などの多くは宿主の免疫力低下による日和見感染症である.性行為感染症(sexually transmitted disease;STD)による腸炎には,アメーバ性大腸炎の約30%,梅毒性や淋菌性腸炎,クラミジア直腸炎,尖圭コンジローマ直腸炎などがある.

参考文献

1)澤辺悦子,北村優佳,古畑紀子,他.Clostridium difficile感染症の迅速診断における糞便中C. difficile抗原およびトキシンA/B同時検出キット─C. DIFF QUIK CHEK COMPLETEの有用性に関する検討.日臨微生物誌 21:253-259, 2011
2)Mattila E, Uusitalo-SeppäläR, Wuorela M, et al. Fecal transplantation, through colonoscopy, is effective therapy for recurrent Clostridium difficile infection. Gastroenterology 142:490-496, 2012
3)Drossman DA. The functional gastrointestinal disorders and the Rome III process. Gastroenterology 130:1377-1390, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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