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今月の主題 知っておきたい直腸肛門部病変 症例アトラス 腫瘍性疾患
痔瘻癌
著者: 鵜瀞条1 松尾恵五1 新井健広1 岡田滋1 川西輝貴1 池上玲一1 浜畑幸弘2 堤修2 指山浩志2
所属機関: 1東葛辻仲病院 2辻仲病院柏の葉
ページ範囲:P.992 - P.994
文献購入ページに移動痔瘻癌は痔瘻が慢性化し,癌化した比較的まれな癌であり,いまだ臨床的に不明な点もある1).本邦の大腸癌研究会のアンケート調査2)では,肛門部悪性腫瘍1,540例のうち痔瘻癌は6.9%であったと報告されている.痔瘻癌の発生起源は痔瘻そのものおよび肛門腺に加えて,先天性奇形の重複腸管の説がある3).しかし,痔瘻癌は進行した状態で発見されることが多く,また既往手術のため発生母地が破壊されていることも多く,組織学的に痔瘻から発生したことを証明することは困難である3)4).そのため,診断基準として臨床経過を重視した隅越ら5)の5項目が用いられる.
①痔瘻が長期(10年以上)にわたって慢性炎症を繰り返している,②痔瘻の部分に疼痛,硬結がある,③ゼリー(ムチン)様の分泌がある,④原発性の癌を直腸肛門部以外に認めない,⑤痔瘻開口部が肛門管または肛門陰窩にある,である.しかし,この基準を何項目以上満たした場合に痔瘻癌と診断するかについては確定した定義はない4).
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