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文献詳細

雑誌文献

胃と腸53巻7号

2018年06月発行

文献概要

今月の主題 知っておきたい直腸肛門部病変 症例アトラス 腫瘍性疾患

痔瘻癌

著者: 鵜瀞条1 松尾恵五1 新井健広1 岡田滋1 川西輝貴1 池上玲一1 浜畑幸弘2 堤修2 指山浩志2

所属機関: 1東葛辻仲病院 2辻仲病院柏の葉

ページ範囲:P.992 - P.994

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疾患の概念
 痔瘻癌は痔瘻が慢性化し,癌化した比較的まれな癌であり,いまだ臨床的に不明な点もある1).本邦の大腸癌研究会のアンケート調査2)では,肛門部悪性腫瘍1,540例のうち痔瘻癌は6.9%であったと報告されている.痔瘻癌の発生起源は痔瘻そのものおよび肛門腺に加えて,先天性奇形の重複腸管の説がある3).しかし,痔瘻癌は進行した状態で発見されることが多く,また既往手術のため発生母地が破壊されていることも多く,組織学的に痔瘻から発生したことを証明することは困難である3)4).そのため,診断基準として臨床経過を重視した隅越ら5)の5項目が用いられる.
 ①痔瘻が長期(10年以上)にわたって慢性炎症を繰り返している,②痔瘻の部分に疼痛,硬結がある,③ゼリー(ムチン)様の分泌がある,④原発性の癌を直腸肛門部以外に認めない,⑤痔瘻開口部が肛門管または肛門陰窩にある,である.しかし,この基準を何項目以上満たした場合に痔瘻癌と診断するかについては確定した定義はない4)

参考文献

1)左雨元樹,山名哲郎,小野朋二郎,他.痔瘻癌42例の臨床病理と治療成績の検討.日本大腸肛門病会誌 70:57-63, 2017
2)鮫島伸一,澤田俊夫,長廻紘.本邦における肛門扁平上皮癌,痔瘻癌の現況,第59回大腸癌研究会アンケート調査報告.日本大腸肛門病会誌 58:415-421, 2005
3)岩垂純一.長期の痔瘻の既往を有する肛門管癌,いわゆる痔瘻癌の臨床病理学的研究.日本大腸肛門病会誌 44:461-476, 1991
4)佐藤太一,山田一隆,緒方俊二,他.痔瘻癌25例の臨床病理学的検討.日消外会誌 49:579-587, 2016
5)隅越幸男,岡田光生,岩垂純一,他.痔瘻癌.日本大腸肛門病会誌 34:467-472, 1981
6)中嶋健太郎,小林昭広,甲田貴丸,他.痔瘻癌15例の臨床病理学的検討.日本大腸肛門病会誌 63:346-358, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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