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文献詳細

雑誌文献

胃と腸53巻7号

2018年06月発行

文献概要

今月の主題 知っておきたい直腸肛門部病変 症例アトラス 非腫瘍性疾患

粘膜脱症候群

著者: 八坂達尚1 久部高司1 石原裕士1 山崎一朋1 寺澤正明1 山岡梨乃1 植木敏晴1 平井郁仁2 松井敏幸3 八尾建史4 原岡誠司5 岩下明德5

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器内科 2福岡大学筑紫病院炎症性腸疾患センター 3福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター 4福岡大学筑紫病院内視鏡部 5福岡大学筑紫病院病理部

ページ範囲:P.1020 - P.1021

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疾患の概念
 直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome;MPS)は,従来の直腸孤立性潰瘍症候群,inflammatory cloacogenic polyp,限局性深在性囊胞性大腸炎(colitis cystica profunda of the rectum;CCP),hamartomatous inverted polypなどと呼ばれた疾患が臨床病理学的に共通した特徴を有することから,これらを包括して1983年にduBoulayら1)により提唱された疾患概念である.
 臨床症状としては,血便や残便感,しぶり腹があり,ほとんどの症例で排便時間が長く,排便時にいきむ習慣を持つ.比較的若年者に多く,下部直腸から中部直腸,特に前壁側を中心に好発する.直腸肛門部の機能異常に起因するとされており,その病態は排便時に弛緩すべき恥骨直腸筋が強く収縮した状態が長時間続くと直腸前壁の粘膜が下方に脱出し,慢性的な機械刺激が加わることや肛門括約筋による絞扼によって虚血性変化を起こす病変と考えられている2)3).病理組織学的所見では,粘膜表層の毛細血管の増生・拡張と粘膜の線維筋症(fibromuscular obliteration)および幼若上皮から成る腺管の過形成が特徴的である4).原則として保存的加療が中心となり,排便習慣の改善が最も効果的であり,必要に応じて食事療法や緩下剤などの薬物療法で対症的治療を行う.過大手術は避けるべきであるが,外科治療が有用であった報告もある5)

参考文献

1)duBoulay CE, Fairbrother J, Isaacson PG. Mucosal prolapse syndrome─a unifying concept for solitary and related disorders. J Clin Pathol 36:1264-1268, 1983
2)Rutter KRP, Riddell RH. The solitary ulcer syndrome of the rectum. Clin Gastroenterol 4:505-530, 1975
3)斎藤裕輔.cap polyposisと直腸粘膜脱症候群(MPS).胃と腸 37:627-630, 2002
4)岩下明德,原岡誠司,八尾隆史.cap polyposisと粘膜脱症候群はどう違うのか─病理の立場から.胃と腸 37:651-660, 2002
5)東光邦,隅越幸男,岩垂純一,他.Mucosal prolapse syndromeの病態と治療.胃と腸 25:1295-1300, 1990
6)大川清隆,中村志郎,奥野匡宥.直腸粘膜脱症候群,急性出血性直腸潰瘍.胃と腸 32:497-503, 1997
7)河井裕介,石川茂直,稲葉知己,他.深在性囊胞性大腸炎の1例.Gastroenterol Endosc 59:48-55, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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