icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸53巻7号

2018年06月発行

文献概要

今月の主題 知っておきたい直腸肛門部病変 症例アトラス 非腫瘍性疾患

梅毒性直腸炎

著者: 池内和彦1 福島一彰1 藤原崇2 今村顕史1

所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院感染症科 2がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科

ページ範囲:P.1024 - P.1026

文献購入ページに移動
疾患の概念
 梅毒は,近年本邦における報告者数が急激に増加している性感染症で,Treponema pallidumが,性行為によって生殖器,口腔粘膜,肛門部などから感染することで発症する.臨床所見としては,陰部の初期硬結や硬性下疳,全身の皮疹などの症状を契機に診断されることが多いが,肛門性交により直腸炎を呈する男性同性愛者の症例もまれながら報告されている1)
 梅毒の臨床経過としては,第1期梅毒(感染部位の初期硬結,硬性下疳を認めるもの),第2期梅毒(全身の皮膚,粘膜の発疹や臓器梅毒の症状がみられるもの),潜伏梅毒,晩期梅毒の順に進行することが知られている2)3)(Fig.1).梅毒が直腸炎を来す機序としては,肛門性交による第1期梅毒として潰瘍を呈する場合と,第2期梅毒の粘膜病変の一部として出現する場合があるが1)4)5),第1期梅毒と第2期梅毒の症状が同時にみられることもあり,区別が難しい症例も多い.

参考文献

1)梅枝覚,廣純一郎,成田公正,他.梅毒性直腸潰瘍,直腸炎の1例.日本大腸肛門病会誌 55:151-157, 2002
2)Golden MR, Marra CM, Holmes KK. Update on syphilis:resurgence of an old problem. JAMA 290:1510-1514, 2003
3)柳澤如樹,味澤篤.現代の梅毒.モダンメディア 54:42-49, 2008
4)Gopal P, Shah RB. Primary anal canal syphilis in men:the clinicopathologic spectrum of an easily overlooked diagnosis. Arch Pathol Lab Med 139:1156-1160, 2015
5)小林謙一郎,柳澤如樹,菅沼明彦,他.梅毒性直腸炎を契機にHIV感染症の合併が判明した1例.感染症学会誌 86:415-418, 2012
6)2016ガイドライン委員会.性感染症診断・治療ガイドライン2016.日性感染症会誌 27:46-50, 2016
7)Zhao WT, Liu J, Li YY. Syphilitic proctitis mimicking rectal cancer:a case report. World J Gastrointest Pathophysiol 1:112-114, 2010
8)Sigle GW, Kim R. Sexually transmitted proctitis. Clin Colon Rectal Surg 28:70-78, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?