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今月の主題 知っておきたい直腸肛門部病変 症例アトラス 非腫瘍性疾患
急性出血性直腸潰瘍
著者: 大川清孝1 青木哲哉1 上田渉1 大庭宏子1 宮野正人1 小野洋嗣1 中内脩介1 川村悦史1 山口誓子1 倉井修1
所属機関: 1大阪市立十三市民病院消化器内科
ページ範囲:P.1028 - P.1030
文献購入ページに移動広岡ら1)は,急性出血性直腸潰瘍(acute hemorrhagic rectal ulcer;AHRU)の疾患概念を“重篤な基礎疾患(特に脳血管障害)を有する高齢者に,突然無痛性の大量新鮮出血にて発症し,歯状線に接するかその近傍下部直腸に不整形地図状ないし帯状で多発もしくは単発性の横軸に長い潰瘍で,止血がなされれば比較的良好に治癒軽快する”と初めて報告した.また,その成因は脳血管障害のみではなく,重篤な基礎疾患に起因するストレス潰瘍説が最も考えられるとした.
次いで,中村らはAHRUの病因として仰臥位寝たきり状態が重要と考えた.そこで,AHRU患者において血流を測定し,AHRUの好発部位である下部直腸においてのみ,側臥位から仰臥位への体位変換により有意な粘膜血流の減少を認めた.以上より,中村ら2)は,AHRUの疾患概念を“動脈硬化の要因を背景に血流低下の準備状態にある高齢者が,何らかの理由で寝たきり状態になり,下部直腸の粘膜血流低下を来し惹起される虚血性粘膜障害である”と提唱した.
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