icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻12号

2019年11月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性食道炎

サイトメガロウイルス食道炎

著者: 髙雄暁成1 藤原崇2 堀口慎一郎3 前田有紀4 小泉浩一1 今村顕史5 門馬久美子4

所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科 2藤原胃腸科内科 3がん・感染症センター都立駒込病院病理科 4がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科 5がん・感染症センター都立駒込病院感染症科

ページ範囲:P.1605 - P.1608

文献購入ページに移動
疾患の概念と最近の動向
 サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)はヘルペスウイルス科に属するウイルスで,通常は幼少期に感染し,初感染後は不顕性感染の経過をたどり,多くの場合は潜伏感染の状態を維持する.しかし,悪性腫瘍,ステロイド使用者,HIV(human immunodeficiency virus)感染症,骨髄移植後などの免疫抑制状態の患者においては,潜伏感染の再活性化が引き起こされる.まれに健常人での発症もみられる1).食道,胃,大腸などの消化管にびらんや潰瘍性の病変を来す他,肺・網膜・中枢神経にも病変を来す.食道炎は主にCD4(cluster of differentiation)値が100/μl以下に低下したHIV感染者で好発する.
 近年,先進国において治療法・治療薬の進歩に伴いHIV感染症のマネージメントが向上している.抗HIV治療薬の副作用が強い時期は治療の開始が遅かったが,現在はCD4値にかかわらずに治療を開始することが推奨されている.米国保健福祉省(United States Department of Health and Human Services;DHHS)のガイドラインでは,2017年よりHIVの診断と同時に抗レトロウイルス療法(anti-retroviral therapy;ART)開始が推奨されており,世界的には感染が判明次第,可及的速やかに治療を開始することが推奨されている.

参考文献

1)卜部祥明,上村雅之,谷口英明,他.健常成人に発症したサイトメガロウイルスによる肝炎合併上部消化管潰瘍の2例.日消誌 100:987-991, 2003
2)厚生労働省エイズ動向委員会.平成29(2017)年エイズ発生動向年報—概要.https://api-net.jfap.or.jp/status/2017/17nenpo/h29gaiyo.pdf
3)Hoversten P, Kamboj AK, Wu TT, et al. Risk factors, endoscopic features, and clinical outcomes of cytomegalovirus esophagitis based on a 10-year analysis at a single center. Clin Gastroenterol Hepatol 2019 May 8[Epub ahead of print]
4)藤原崇,門馬久美子,堀口慎一郎,他.感染性食道炎の内視鏡診断—ウイルス感染症.胃と腸 50:175-187, 2015
5)阿知波宏一,荒川直之,青木孝太,他.高度の食道狭窄を伴ったサイトメガロウイルス食道炎の1例.日消誌 51:2690-2698, 2009
6)Ljungman P, de la Camara R, Cordonnier C, et al. Management of CMV, HHV-6, HHV-7 and Kaposi-sarcoma herpes(HHV-8)infections in patients with hematological malignancies and after SCT. Bone Marrow Transplant 42:227-240, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?