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文献概要
今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性胃炎
胃結核
著者: 八板弘樹1 蔵原晃一1 大城由美2 浦岡尚平1 池上幸治1 平田敬1 清森亮祐1 末永文彦1 和智博信1 村田征喜1
所属機関: 1松山赤十字病院胃腸センター 2松山赤十字病院病理診断科
ページ範囲:P.1618 - P.1622
文献購入ページに移動胃結核はヒト型結核菌であるMycobacterium tuberculosisにより引き起こされる消化管感染症である1).消化管結核の部位別罹患頻度は,胃3.8%,十二指腸3.6%,小腸29.7%,回盲部37.9%,結腸40.3%,直腸1.2%と報告されており2),消化管結核の中でも極めてまれとされる.それは,胃がリンパ組織に乏しい臓器であることや,胃酸の影響が挙げられる.症状や内視鏡像も多彩であり,生検培養やPCR(polymerase chain reaction)法で結核菌が証明されない場合も少なくないため3),難治性胃潰瘍,胃癌,粘膜下腫瘍(submucosal tumor;SMT)の診断で手術を施行され,術後の病理組織学的検査により初めて確定診断される例も多い.感染経路としては,血行性,リンパ行性,直接浸潤,肺結核患者の感染痰の嚥下などが想定されているが4),明確な発症機序については不明な点も多い.
加納ら5)の報告(報告年2018年)によれば,近年の胃結核30例は,八重樫ら6)の胃結核70例の報告(報告年1977年)と比較して,発症年齢が高齢へシフトし,前庭部,幽門部の病変が減り,胃体部の病変が増加していた.今後,高齢化が進む中で,免疫力の低下した高齢者の一次結核や潜在性結核の再燃を念頭に置きながら診療に従事する必要がある.
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