文献詳細
今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて
症例アトラス 感染性胃炎
サイトメガロウイルス胃炎
著者: 小林広幸1 遠藤伸悟1 蔵原晃一2 清森亮祐12 渕上忠彦2 宮崎正史13
所属機関: 1福岡山王病院消化器内科 2松山赤十字病院胃腸センター 3江森医院
ページ範囲:P.1624 - P.1627
文献概要
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)はヒトを自然宿主とするヘルペスウイルスに属する2本鎖DNAウイルスで,学名はhuman herpes virus 5であるが,感染細胞が巨大化することからCMVと呼ばれている.ヒトへの感染は胎内感染による先天性のものと,産道,母乳,唾液,精液,輸血などによる後天性感染に分けられるが,いったん感染すると生涯潜伏感染する1).従来,本邦では欧米に比べCMV感染者が多く,成人の約90%が抗CMV抗体陽性(既感染)とされていたが,近年では若年成人や妊婦の抗体保有率は70%を切るようになり,先進国レベルに近づいてきている2)3).
通常は不顕性感染に終わることがほとんどであるが,先天感染症や免疫不全状態の易感染性宿主での日和見感染(再活性化)が問題となる.その場合,CMVは全身諸臓器に多彩な疾患を引き起こすが,他のヘルペスウイルス〔単純ヘルペス,水痘・帯状疱疹ウイルス,EBV(Epstein-Barr virus)など〕と同様に消化管にも病変を生じ,なかでも胃はCMV感染の好発臓器であり,胃粘膜傷害(CMV胃炎)を生じる4)〜6).また,近年では免疫不全状態がない健常成人に発症するCMV胃炎の報告も増えてきている7)〜9).
参考文献
掲載誌情報