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文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻12号

2019年11月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性胃炎

胃梅毒

著者: 堺勇二1 池田憲治1 上野景子1 小野広幸1 前田和弘2 田邉寛3 岩下明德3

所属機関: 1親愛ステーションクリニック 2親愛天神クリニック 3福岡大学筑紫病院病理部

ページ範囲:P.1628 - P.1631

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疾患の概念と最近の動向
 梅毒は代表的な性感染症の一つであり,多彩な皮膚病変がみられるが,まれながら消化管病変を生じることがある.消化管では胃に最も多いとされ1),消化管梅毒の本邦文献でみると,過去50年間では胃197例,大腸34例(31例が直腸),小腸3例,などの報告がある.
 梅毒は主に性的接触によるT. pallidum(Treponema pallidum)の陰部などへの感染から発症する.10〜90日の潜伏期を経て,感染局所に初期硬結,硬性下疳などの一次病変を形成する(第1期).その後血行性に全身に撒布され,ばら疹などの多彩な皮膚病変や臓器梅毒などの二次病変を生じる(第2期).以後は潜伏梅毒を経て慢性に経過し,ごく一部は年余を経て第3期梅毒(晩期梅毒:心血管梅毒,ゴム腫など)に進展する2).胃梅毒の報告例の多くは第2期のものであり,胃梅毒は,血行性に全身に撒布された菌体とその代謝産物に対する血管アレルギーにより,梅毒性皮疹と同様の機序で形成された胃粘膜疹と推測されている3)

参考文献

1)小林広幸,渕上忠彦.消化管梅毒.胃と腸 37:379-384, 2002
2)日本性感染症学会梅毒委員会梅毒診療ガイド作成小委員会.梅毒診療ガイド.pp 1-14, 2018
3)丸山雅一,早川尚夫,西沢護,他.Gastric lesions associated with secondary syphilis ; a case suspected of gastric sarcoma by x-ray and endoscope.胃と腸 3:195-202, 1968
4)山岸拓也,有馬雄三,高橋啄理,他.発生動向調査からみた性感染症の最近の動向.日性感染症会誌 27:128-145, 2016
5)Greenstein DB, Wilcox CM, Schwartz DA. Gastric syphilis. Report of seven cases and review of literature. J Clin Gastroenterol 18:4-9, 1994
6)小林広幸,渕上忠彦,福島範子,他.胃梅毒の2例—第2期梅毒性皮疹との形態学的類似性について.胃と腸 26:545-551, 1991
7)村井アトム,関弘明,片山寛次,他.生検組織固定標本からTreponema pallidumが証明された胃梅毒の1例.胃と腸 27:254-258, 1992
8)清水淳,吉田浩樹,清水亨,他.特異な胃粘膜変化を認めた胃梅毒の1例.日臨内科医会誌 10:296-300, 1996
9)藤井保治,佐藤和弘,金山二郎,他.免疫抗体法によりT. pallidumを証明しえた胃梅毒の1例.日消誌 84:2425, 1987
10)布施建治,宮川明子,奥村嘉章,他.生検にてTreponema pallidumが証明された胃および大腸梅毒の1例.Gastroenterol Endosc 33:1588, 1991
11)堺勇二,渕上忠彦,平川雅彦,他.梅毒の上部消化管病変—鑑別診断を中心に.胃と腸 29:1401-1410, 1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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