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今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性十二指腸炎
Whipple病
著者: 長末智寛12 蔵原晃一1 川崎啓祐13 八板弘樹1 大城由美4 小林広幸15
所属機関: 1松山赤十字病院胃腸センター 2九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 3岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野 4松山赤十字病院病理部 5福岡山王病院消化器内科
ページ範囲:P.1640 - P.1643
文献購入ページに移動Whipple病は放線菌近縁のグラム陽性桿菌T. whipplei(Tropheryma whipplei)の日和見感染による全身感染症である1)2).本症は小腸粘膜への感染により著明な吸収障害を来すため下痢と体重減少を主徴とするが,関節炎,腹腔内リンパ節腫脹,中枢神経障害(髄膜炎など),眼症状(眼筋麻痺,ぶどう膜炎など),肝脾腫,胸膜炎など多彩な臨床症状を呈する1)2).消化管では十二指腸から小腸に特徴的な粘膜病変を呈し,内視鏡下生検によって診断される.本症は極めてまれな疾患ではあるが,診断が遅れると致死的経過をたどる可能性があり,消化管内視鏡診断の重要性が高い疾患の一つである1)〜3).
本症の報告例は白人の中年男性に多く,欧米では約1,000例が報告されている1)2).本邦での報告は極めてまれで,筆者らが検索し得た範囲(医学中央雑誌およびPubMed,1986〜2018年)では文献報告は13症例のみであった(Table 1)3)〜9).報告例のうち,1976年の楢本らの報告4)を除く12例は,2004年以降の報告となっている.これは本症の周知と小腸内視鏡の普及の影響による可能性が高いと思われるが,増加傾向を反映している可能性もあり,今後の動向を注視する必要がある.
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