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文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻12号

2019年11月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性十二指腸炎

Whipple病

著者: 長末智寛12 蔵原晃一1 川崎啓祐13 八板弘樹1 大城由美4 小林広幸15

所属機関: 1松山赤十字病院胃腸センター 2九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 3岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野 4松山赤十字病院病理部 5福岡山王病院消化器内科

ページ範囲:P.1640 - P.1643

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疾患の概念と最近の動向
 Whipple病は放線菌近縁のグラム陽性桿菌T. whipplei(Tropheryma whipplei)の日和見感染による全身感染症である1)2).本症は小腸粘膜への感染により著明な吸収障害を来すため下痢と体重減少を主徴とするが,関節炎,腹腔内リンパ節腫脹,中枢神経障害(髄膜炎など),眼症状(眼筋麻痺,ぶどう膜炎など),肝脾腫,胸膜炎など多彩な臨床症状を呈する1)2).消化管では十二指腸から小腸に特徴的な粘膜病変を呈し,内視鏡下生検によって診断される.本症は極めてまれな疾患ではあるが,診断が遅れると致死的経過をたどる可能性があり,消化管内視鏡診断の重要性が高い疾患の一つである1)〜3)
 本症の報告例は白人の中年男性に多く,欧米では約1,000例が報告されている1)2).本邦での報告は極めてまれで,筆者らが検索し得た範囲(医学中央雑誌およびPubMed,1986〜2018年)では文献報告は13症例のみであった(Table 1)3)〜9).報告例のうち,1976年の楢本らの報告4)を除く12例は,2004年以降の報告となっている.これは本症の周知と小腸内視鏡の普及の影響による可能性が高いと思われるが,増加傾向を反映している可能性もあり,今後の動向を注視する必要がある.

参考文献

1)Fenollar F, Puéchal X, Raoult D. Whipple's disease. N Engl J Med 356:55-66, 2007
2)Fenollar F, Lagier JC, Raoult D. Tropheryma whipplei and Whipple's disease. J Infect 69:103-112, 2014
3)蔵原晃一,川崎啓佑,長末智寛,他.Whipple病.胃と腸 53:489-495, 2018
4)楢本純一,為近義夫,新関寛,他.非特異的多発性小腸潰瘍に併存したWhipple病の1例.胃と腸 11:227-231, 1976
5)川崎啓佑,小林広幸,蔵原晃一,他.十二指腸NBI拡大観察とカプセル小腸内視鏡が有用であったWhipple病の1例.胃と腸 46:311-319, 2011
6)長末智寛,蔵原晃一,八板弘樹,他.電子顕微鏡所見とPCR法で確診したWhipple病の1例.日消誌 113:1894-1900, 2016
7)小野洋嗣,中内脩介,池田敦史,他.内視鏡的に治療前後の経過が追えた基礎疾患のないWhipple病の1例.Gastroenterol Endosc 59:2607-2613, 2017
8)赤澤賢一郎,日比野真.診断に苦慮し,臨床的にWhipple病と診断した一例.日病総合診療医会誌 14:518-519, 2018
9)Saito T, Shiode J, Ohya S, et al. Whipple's Disease with Long-term Endoscopic Follow-up. Intern Med 57:1707-1713, 2018
10)平田敬,蔵原晃一.白色絨毛.胃と腸 52:630, 2017
11)八板弘樹,蔵原晃一,大城由美.炭酸ランタンによる十二指腸病変を経時的に観察し得た1例.胃と腸 53:1666-1672, 2018
12)平田敬,蔵原晃一,八板弘樹,他.十二指腸非腫瘍性病変の拡大観察.胃と腸 54:246-258, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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