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文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻12号

2019年11月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性十二指腸炎

糞線虫症

著者: 金城徹1 外間昭1 金城福則2 平田哲生3 岸本一人4 伊良波淳5 大平哲也1 田中照久1 大石有衣子1 島袋耕平1 田端そうへい1 古賀絵莉香1 藤田次郎5

所属機関: 1琉球大学医学部附属病院光学医療診療部 2浦添総合病院消化器病センター 3琉球大学医学部附属病院診療情報管理センター 4与那原中央病院 5琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学

ページ範囲:P.1644 - P.1647

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疾患の概念と最近の動向
 糞線虫症(strongyloidiasis)は土壌より経皮的に感染し,主に十二指腸および空腸上部に寄生する糞線虫(Strongyloides stercoralis)による消化管寄生虫感染症である.本邦では亜熱帯地域に属する沖縄県と鹿児島県奄美地方が浸淫地であり,ほかの地域での保虫者は浸淫地出身者がほとんどで,海外からの輸入感染はまれとされている.しかし,倉岡ら1)は浸淫地の居住歴がなく,1週間の沖縄旅行(1972年)のみの重症糞線虫症患者を報告しており,本虫が分布しているアフリカ,アジアおよび南アメリカの熱帯・亜熱帯地域への旅行の際に汚染された土壌に触れることがあれば,同様のことが起こりうる可能性があるため,それを加味した問診が必要である.また,本邦においても浸淫地からの在留外国人が年々増加していることから,輸入症例に遭遇する割合が増えると思われる.
 糞線虫陽性者は陰性者に比較して,成人T細胞性白血病リンパ腫の原因となるヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1;HTLV-1)の重複感染をしている割合が高く,重複感染者は重症化しやすいうえに駆虫薬(イベルメクチン)に対する抵抗性が高いとされている2)〜4).糞線虫感染時にはTh2型免疫応答によりIgE抗体が上昇し,末梢血の好酸球が増加するため,糞線虫症診断の手がかりとなるが,HTLV-1陽性者はIgE抗体の産生が低下し,好酸球上昇も認めないことから,診断の遅れにつながるため注意が必要である5)6)

参考文献

1)倉岡紗樹子,高橋索真,豊澤惇希,他.上部消化管内視鏡検査が診断の契機となり,駆虫療法により救命し得た重症糞線虫症の1例.Gastroenterol Endosc 60:237-242, 2018
2)Tanaka T, Hirata T, Parrott G, et al. Relationship among strongyloides stercoralis infection, human t-cell lymphotropic virus type 1 infection, and cancer:a 24-year cohort inpatient study in Okinawa, Japan. Am J Trop Med Hyg 94:365-370, 2016
3)Hirata T, Uchima N, Kishimoto K, et al. Impairment of host immune response against strongyloides stercoralis by human T cell lymphotropic virus type 1 infection. Am J Trop Med Hyg 74:246-249, 2006
4)Carvalho EM, Da Fonceca Porto A. Epidemiological and clinical interaction between HTLV-1 and Strongyloides stercoralis. Parasite Immunol 26:487-497, 2004
5)Porto AF, Neva FA, Bittencourt H, et al. HTLV-1 decreases Th2 type of immune response in patients with strongyloidiasis. Parasite Immunol 23:503-507, 2001
6)Montes M, Sanchez C, Verdonck K, et al. Regulatory T cell expansion in HTLV-1 and strongyloidiasis co-infection is associated with reduced IL-5 responses to Strongyloides stercoralis antigen. PLoS Negl Trop Dis 3:e456, 2009
7)Hirata T, Nakamura H, Kinjo N, et al. Increased detection rate of Strongyloides stercoralis by repeated stool examinations using the agar plate culture method. Am J Trop Med Hyg 77:683-684, 2007
8)上原剛,金城福則,新村政昇,他.糞線虫陽性者における十二指腸内視鏡検査の診断的有用性について.Clin Parasitol 5:142-143, 1994
9)Kishimoto K, Hokama A, Hirata T, et al. Endoscopic and histopathological study on the duodenum of Strongyloides stercoralis hyperinfection. World J Gastroenterol 14:1768-1773, 2008
10)平田哲生.糞線虫症.「わが国における熱帯病・寄生虫症の最適な診断治療体制の構築」丸山治彦,木村幹男,小山佳祐,編.寄生虫症薬物治療の手引き,改訂10.0版.日本医療研究開発機構,新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業,pp 69-70,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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