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文献概要
今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性十二指腸炎
ランブル鞭毛虫症
著者: 髙橋索真1 稲葉知己1 安藤翠2 中村聡子2 溝渕光一2
所属機関: 1香川県立中央病院消化器内科 2香川県立中央病院病理診断科
ページ範囲:P.1648 - P.1651
文献購入ページに移動ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)は,消化管に寄生する原虫であるランブル鞭毛虫(Giardia duodenalis ; G. duodenalis,別名:G. intestinalis,G. lamblia)による感染症であり,17世紀に顕微鏡を発明したLeeuwenhoekが自身の便中に発見したとされている1).地球上に存在する最も古い真核生物の一つで,ミトコンドリアを有しない.発展途上国を中心に世界中に広く分布し,感染者数は2〜3億人と言われる.流行地では成人よりも小児の感染率が高い2)〜5).日本寄生虫学会の和名表では“ランブル鞭毛虫”とされているが,感染症法では“ジアルジア症”とされ,五類感染症(全数把握疾患)に指定されており,診断後1週間以内の届け出が義務づけられている2)6).国立感染症研究所によれば2010〜2018年の国内の患者数は年間60〜90人で推移している7).一方,米国では年間報告件数が1万件を超えており,本邦では診断に至っていないケースも多いのではないかと考えられている.本邦における感染のリスク要因は,発展途上国への旅行と男性同性愛者間の性行為とされる.一方,欧米では水道管に汚水が混入したことによる集団発生事例が報告されている1)8).ヒトに寄生するランブル鞭毛虫は,イヌ,ネコ,ウシにも感染するとされ,これらの動物からヒトへの感染事例も報告されており,人畜共通感染症の側面もある1)9).
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