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文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻12号

2019年11月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管感染症—最近の話題を含めて 症例アトラス 感染性十二指腸炎

ランブル鞭毛虫症

著者: 髙橋索真1 稲葉知己1 安藤翠2 中村聡子2 溝渕光一2

所属機関: 1香川県立中央病院消化器内科 2香川県立中央病院病理診断科

ページ範囲:P.1648 - P.1651

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疾患の概念と最近の動向
 ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)は,消化管に寄生する原虫であるランブル鞭毛虫(Giardia duodenalis ; G. duodenalis,別名:G. intestinalis,G. lamblia)による感染症であり,17世紀に顕微鏡を発明したLeeuwenhoekが自身の便中に発見したとされている1).地球上に存在する最も古い真核生物の一つで,ミトコンドリアを有しない.発展途上国を中心に世界中に広く分布し,感染者数は2〜3億人と言われる.流行地では成人よりも小児の感染率が高い2)〜5).日本寄生虫学会の和名表では“ランブル鞭毛虫”とされているが,感染症法では“ジアルジア症”とされ,五類感染症(全数把握疾患)に指定されており,診断後1週間以内の届け出が義務づけられている2)6).国立感染症研究所によれば2010〜2018年の国内の患者数は年間60〜90人で推移している7).一方,米国では年間報告件数が1万件を超えており,本邦では診断に至っていないケースも多いのではないかと考えられている.本邦における感染のリスク要因は,発展途上国への旅行と男性同性愛者間の性行為とされる.一方,欧米では水道管に汚水が混入したことによる集団発生事例が報告されている1)8).ヒトに寄生するランブル鞭毛虫は,イヌ,ネコ,ウシにも感染するとされ,これらの動物からヒトへの感染事例も報告されており,人畜共通感染症の側面もある1)9)

参考文献

1)吉田幸雄,有薗直樹.ランブル鞭毛虫.図説人体寄生虫学,改訂第9版.南山堂,pp 46-49, 2016
2)井関基弘.ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症).高久史麿,尾形悦郎,黒川清,他(監).新臨床内科学,第9版.医学書院,p 1394, 2009
3)松本主之,檜沢一興,浅野光一,他.ランブル鞭毛虫症.胃と腸 37:405-408, 2002
4)Vivancos V, González-Alvarez I, Bermejo M, et al. Giardiasis:Characteristics, Pathogenesis and New Insights About Treatment. Curr Top Med Chem 18:1287-1303, 2018
5)Minetti C, Chalmers RM, Beeching NJ, et al. Giardiasis. BMJ 355:i5369, 2016
6)所正治,ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症).門脇孝,永井良三(編).カラー版 内科学.西村書店,p 1889, 2012
7)国立感染症研究所.発生動向調査年別報告数一覧,全数把握—五類感染症(全数).https://www.niid.go.jp/niid/ja/survei/2085-idwr/ydata/8113-report-ja2017-30.html(2019年9月2日閲覧)
8)Hanevik K, Hausken T, Morken MH, et al. Persisting symptoms and duodenal inflammation related to Giardia duodenalis infection. J Infect 55:524-530, 2007
9)阿部仁一郎.ジアルジアの分類と分子疫学.生活衛生 49:98-107, 2005
10)大西健児.ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症).G.I.Res 14:331-335, 2006
11)中村滋郎,松本主之,飯田三雄.ランブル鞭毛虫症.消内視鏡 21:422-424, 2009
12)Gheorghe C, Cotruta B, Becheanu G, et al. Giardia duodenalis associated with intestinal metaplasia of the stomach. J Gastrointestin Liver Dis 26:221, 2017
13)Allain T, Amat CB, Motta JP, et al. Interactions of Giardia sp. with the intestinal barrier:Epithelium, mucus, and microbiota. Tissue Barriers 5:e1274354, 2017
14)永尾重昭,丸田紘史.川口淳.ランブル鞭毛虫症.消内視鏡 24:1743, 2012
15)小山茂樹,藤山佳秀.機能性下痢—疾患概念と治療法.成人病と生活習慣病 39:79-82, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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