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文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻2号

2019年02月発行

早期胃癌研究会症例

ESDが貧血改善に有効であった多発隆起型直腸粘膜脱症候群の1例

著者: 中内脩介1 大川清孝1 上田渉1 小野洋嗣1 宮野正人1 川村悦史1 佐野弘治1 大庭宏子2 山口誓子1 青木哲哉1 倉井修1 小野寺正征3

所属機関: 1大阪市立十三市民病院消化器内科 2大阪市立弘済院附属病院内科 3市立川西病院病理診断科

ページ範囲:P.278 - P.284

文献概要

要旨●患者は20歳代,男性.排便時出血を主訴に前医を受診し,高度の貧血を認めた.大腸内視鏡検査で直腸に病変を認め,生検で診断がつかないため当院に紹介となった.大腸内視鏡検査では,直腸前壁の第2 Houston弁上,第1 Houston弁上,直腸下端に白苔で覆われた発赤調の隆起性病変を認めた.診断目的で小病変に対して内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行し,直腸粘膜脱症候群と診断した.保存的加療で貧血が改善しないため,3病変すべてに対して内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を施行した.ESD 2年後には直腸下端以外の2病変の再発がみられた.排便指導と緩下剤により,ESD 5年後には第2 Houston弁上の発赤を伴う浅い潰瘍のみとなった.貧血の改善が得られたため,ESD治療は有用であったと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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