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文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻8号

2019年07月発行

今月の主題 十二指腸腺腫・癌の診断

序説

十二指腸腫瘍の内視鏡診断と治療の動向

著者: 矢作直久1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門

ページ範囲:P.1085 - P.1087

文献概要

はじめに
 十二指腸腫瘍は比較的まれな疾患であり,特に表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial non-ampullary duodenal epithelial tumor ; SNADET)の頻度は全消化管腫瘍の1〜2%と言われており,さらに癌に限れば全消化管癌の0.3%程度とされている.この頻度の低さゆえに他臓器のように十分なデータの蓄積がなく,さまざまな混乱を招いている.そもそも以前は,頻度も低く,多くは放置しても問題ない良性疾患と考えられていたため,あまり注目されることはなかった.しかし,近年になり発見される頻度が明らかに高くなっている1).これが,疾患頻度は変わっていないものの,内視鏡検診が普及するとともにSNADETの存在が周知され,より丁寧に観察されるようになったことによるのか,実際に疾患頻度が上昇していることによるのかは現時点では明らかではない.しかし,H. pylori(Helicobacter pylori)罹患率の低下や食事の欧米化に伴い,Barrett上皮やBarrett腺癌が増加してきているのと同様に,十二指腸においても疾患構造が変わってきている可能性が否定できない.
 一方で,SNADETに関しては長年経過観察してもほとんど変化のないものが多く,進行癌もほとんどみられないことから治療の必要性は乏しいものと考えられてきた.しかし,多数の症例を積み重ねてみると,腫瘍サイズが大きくなればなるほど担癌率が上がってくることもわかってきた.また,胃癌や大腸癌とは異なり,腺腫から浸潤癌に変わっていく症例はまずないと考えられてきたが,経過観察中に腺腫から癌に変わり,結果的に粘膜下層に浸潤(SM浸潤)して転移した症例もみられている.また,従来言われてきたように十二指腸において浸潤癌の頻度はかなり低いものと考えられるが,いったんSM浸潤を来した場合には高頻度にリンパ節転移を来し,予後不良であることも明らかになってきた.したがって,一生フォローするだけで十分なわけではなく,侵襲の少ない治療ですむうちに内視鏡で切除するという戦略もありうると考えられる.

参考文献

1)Goda K, Kikuchi D, Yamamoto Y, et al. Endoscopic diagnosis of superficial non-ampullary duodenal epithelial tumors in Japan:Multicenter case series. Dig Endosc 26(Suppl 2):23-29, 2014
2)Kinoshita S, Nishizawa T, Ochiai Y, et al. Accuracy of biopsy for the preoperative diagnosis of superficial nonampullary duodenal adenocarcinoma. Gastrointest Endosc 86:329-332, 2017
3)Kato M, Ochiai Y, Fukuhara S, et al. Clinical impact of closure of the mucosal defect after duodenal endoscopic submucosal dissection. Gastrointest Endosc 89:87-93, 2019
4)Yahagi N, Kato M, Ochiai Y, et al. Outcomes of endoscopic resection for superficial duodenal epithelial neoplasia. Gastrointest Endosc 88:676-682, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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