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文献詳細

雑誌文献

胃と腸54巻9号

2019年08月発行

文献概要

今月の主題 消化管X線造影検査のすべて—撮影手技の実際と読影のポイント 主題

小腸X線造影

著者: 蔵原晃一1 河内修司12 川崎啓祐13 吉田雄一朗12 長末智寛12 鷲尾恵万12 梅野淳嗣2 鳥巣剛弘2 江﨑幹宏4 大城由美5 中村昌太郎3 八尾隆史6 小林広幸17 松本主之3 岩下明德8 渕上忠彦1

所属機関: 1松山赤十字病院胃腸センター 2九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 3岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野 4佐賀大学医学部附属病院光学医療診療部 5松山赤十字病院病理部 6順天堂大学医学部人体病理病態学 7福岡山王病院消化器内科 8AII病理画像研究所

ページ範囲:P.1254 - P.1269

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要旨●小腸X線造影検査はバリウムの投与経路から経口法と経管法(ゾンデ法)に分類される.経口法では充盈像と圧迫像が,経管法ではバリウムに加え空気を投与することにより,充盈像,圧迫像と二重造影像が得られる.潰瘍性病変を呈する炎症性疾患のX線診断では,特に管腔変形・狭窄例において,①狭窄の形態,②狭窄と腸間膜の位置関係,③周囲粘膜の随伴所見,の解析が鑑別診断に有用となる.びまん性病変を呈する疾患は,X線上,皺襞肥厚と顆粒状粘膜の組み合わせを呈することが多く,両所見の解析が診断に重要である.腫瘍性病変の鑑別診断には,①SMT様所見の有無,②管外性発育傾向の有無,③狭窄部の両端のoverhanging edgeの有無,④壁伸展不良所見の程度,などの解析が有用である.生理的に管腔が狭い小腸では,狭窄合併例での内視鏡的アプローチには限界があり,X線造影検査の併用が病変の全体像の把握に有用となる症例が少なくない.二重造影像は切除標本肉眼像,病理組織像との対比に有用であるが,特に管腔変形・狭窄所見は,内視鏡検査では得られない輪郭線から成り,その解析は鑑別診断に極めて有用で,質的診断能の観点から内視鏡検査を凌駕する可能性がある.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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