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文献詳細

雑誌文献

胃と腸55巻10号

2020年09月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

胃多発壁内憩室症を呈したcollagenous gastritisの1例

著者: 吉村大輔1 中野佳余子1 加藤誠也2 北川祐介1 落合利彰1 茶圓智人1 福田慎一郎1 瀧澤延喜1 市田かおる1 梅谷聡太1 緑川啓一3

所属機関: 1済生会福岡総合病院消化器内科 2済生会福岡総合病院病理診断科 3緑川内科循環器科医院

ページ範囲:P.1303 - P.1312

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要旨●患者は40歳代,男性.症状なく,検診異常を契機に当院を紹介され受診した.胃X線造影検査では粘膜は全体に粗糙で,胃体部ではひだが消失し大小の類円形で丈の低い透亮像が多発していた.さらに,胃体部大彎には小さなカフスボタン状のニッシェが多発していた.EGDでは胃体部優位に高度の粘膜萎縮を認め,前後壁を中心に大小類円形で丈の低い粘膜が島状に多数存在し,その一部では内部に浅く緩やかな陥凹を伴っていた.胃体部大彎では,粗糙な顆粒状粘膜を背景に楔状〜小孔状の開口部を呈する深い陥凹が多発していた.胃体部前壁の類円形島状粘膜辺縁の狙撃生検では,島状粘膜部で萎縮に乏しい胃底腺粘膜の所見が,その周囲部では高度の萎縮と偽幽門腺化生に加え,上皮下を中心に粘膜固有層にcollagen bandの沈着と慢性炎症細胞浸潤が認められcollagenous gastritisと診断した.胃体部大彎の多発陥凹は,collagenous gastritisで知られる萎縮から取り残された粘膜島の中央が緩やかに陥凹する現象に引き続き,慢性の炎症機転が進行することにより生じた壁内憩室症と考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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