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今月の主題 大腸鋸歯状病変の新展開 序説
大腸鋸歯状病変—常識と変革の狭間で
著者: 山野泰穂1
所属機関: 1札幌医科大学医学部消化器内科学講座
ページ範囲:P.1561 - P.1562
文献購入ページに移動 物事に対する価値観が変わることは歴史的にみても時折生じることである.例えば,“天動説”から“地動説”への転換もその一つであろう.宇宙の中心が地球であるという“天動説”は16世紀まで宗教上の世界観として常識であったが,科学的根拠に基づいてコペルニクスらが“地動説”を説いたことは衝撃的であったと考える.
さて,消化管領域においても,今まさに価値観が変わろうとしている事案がある.それが,ここ十数年注目を浴びてきた大腸鋸歯状病変(個人的には鋸歯状病変群とすべきと考える)である.2010年版のWHO分類1)では大腸鋸歯状病変には過形成性ポリープ,SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp),TSA(traditional serrated adenoma)およびSSA/P with cytological dysplasiaがあるが,中でもSSA/Pはboot様,逆T字と言われる腺底部拡張,異常分岐像などの特徴的病理組織学的所見を病変全体の10%以上に認める病変であり2),遺伝子学的にBRAF変異と高メチル化(CIMP-high)を示しMSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変(precursor lesion)として考えられている3).実際の臨床現場において,SSA/Pは特徴的な拡大所見を有した粘液で被覆された病変として認識され,SSA/Pを背景に伴った癌化症例が認められ4)5),また経時的に癌に至った症例の報告もなされている6).以上の結果より,adenoma-carcinoma sequence,de novo発癌に次ぐ第3の発癌ルート“serrated neoplastic pathway”としてSSA/Pの認知度は大いに高まった.このpathwayではSSA/Pの起源が過形成性ポリープと示唆されている背景や,SSA/Pと過形成性ポリープの鑑別が困難になってきたことを理由に,2019年版のWHO分類7)ではSSA/Pの名称をSSL(sessile serrated lesion)に変更したばかりではなく,過形成性ポリープのうち拡張腺管が1つでもあればSSLとするという定義に変更した.
さて,消化管領域においても,今まさに価値観が変わろうとしている事案がある.それが,ここ十数年注目を浴びてきた大腸鋸歯状病変(個人的には鋸歯状病変群とすべきと考える)である.2010年版のWHO分類1)では大腸鋸歯状病変には過形成性ポリープ,SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp),TSA(traditional serrated adenoma)およびSSA/P with cytological dysplasiaがあるが,中でもSSA/Pはboot様,逆T字と言われる腺底部拡張,異常分岐像などの特徴的病理組織学的所見を病変全体の10%以上に認める病変であり2),遺伝子学的にBRAF変異と高メチル化(CIMP-high)を示しMSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変(precursor lesion)として考えられている3).実際の臨床現場において,SSA/Pは特徴的な拡大所見を有した粘液で被覆された病変として認識され,SSA/Pを背景に伴った癌化症例が認められ4)5),また経時的に癌に至った症例の報告もなされている6).以上の結果より,adenoma-carcinoma sequence,de novo発癌に次ぐ第3の発癌ルート“serrated neoplastic pathway”としてSSA/Pの認知度は大いに高まった.このpathwayではSSA/Pの起源が過形成性ポリープと示唆されている背景や,SSA/Pと過形成性ポリープの鑑別が困難になってきたことを理由に,2019年版のWHO分類7)ではSSA/Pの名称をSSL(sessile serrated lesion)に変更したばかりではなく,過形成性ポリープのうち拡張腺管が1つでもあればSSLとするという定義に変更した.
参考文献
1)Snover DC, Ahnen DJ, Burt RW, et al. Serrated polyps of the colon and rectum and serrated("hyperplastic")polyposis. In Bosman FT, Carneiro F, Hruban RH, et al(eds). WHO Classification of Tumours Pathology and Genetics Tumours of the Digestive System, 4th ed. IARC Press, Lyon, 2010
2)八尾隆史,菅井有,岩下明德,他.大腸SSA/Pの病理組織学的特徴と診断基準—大腸癌研究会プロジェクト研究から.胃と腸 46:442-448, 2011
3)Wynter CVA, Walsh MD, Higuchi T, et al. Methylation patterns define two types of hyperplastic polyp associated with colorectal cancer. Gut 53:573-580, 2004
4)Kimura T, Yamamoto E, Yamano H, et al. A novel pit pattern identifies the precursor of colorectal cancer derived from sessile serrated adenoma. Am J Gastroenterol 107:460-469, 2012
5)浦岡俊夫,東玲治,大原信哉,他.大腸鋸歯状病変の内視鏡診断—pit pattern所見を中心に.胃と腸 46:406-416, 2011
6)Amemori S, Yamano H, Tanaka Y, et al. Sessile serrated adenoma/polyp showed rapid malignant transformation in the final 13 months. Dig Endosc 2019[Epub ahead of print]
7)Pai RK, Makinen MJ, Rosty C. Colorectal serrated lesions and polyps. In WHO Classification of Tumours Editorial Board(ed). World Health Organization Classification of Tumours, Digestive System Tumours, 5th ed. IARC press, Lyon, pp 163-169, 2019
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