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文献詳細

雑誌文献

胃と腸55巻2号

2020年02月発行

文献概要

今月の主題 潰瘍性大腸炎関連腫瘍—診断・治療の現状と課題 主題症例

EUSが診断の契機となった潰瘍性大腸炎関連大腸癌の1例

著者: 清水誠治1 富岡秀夫1 小木曽聖1 池田京平1 上島浩一1 横溝千尋1 髙島英隆1 奥山祐右2

所属機関: 1JR大阪鉄道病院消化器内科 2京都第一赤十字病院消化器内科

ページ範囲:P.201 - P.207

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要旨●EUSが診断の契機となった潰瘍性大腸炎(UC)関連大腸癌の症例を提示した.患者は30歳代,男性で,発症後19年を経過した全大腸炎型の再燃寛解型UCである.定期検査で実施したS状結腸の内視鏡検査で近位側直腸に多発ポリープ様隆起がみられた.同時に実施したEUSで最口側の隆起直下および周囲の粘膜下層に明瞭な低エコー領域が観察された.同部位からの生検で低分化腺癌と印環細胞癌の集塊が証明された.精査後,結腸亜全摘術が施行された.切除標本肉眼所見で近位側直腸の隆起周囲には径約15mmの陥凹がみられ,病理組織学的には低分化腺癌,粘液癌,印環細胞癌から成り,粘膜下層最深部に及ぶ浸潤を示すとともに漿膜下層にも非連続的に癌巣がみられた.肛門側の隆起は高分化腺癌で粘膜に限局していた.これら2病変の周囲には平坦なdysplasiaが分布していた.郭清したリンパ節に転移はみられなかった.本症例からEUSがUC関連浸潤大腸癌を検出する上で有用である可能性があると考えられる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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