胃と腸55巻3号

2020年03月発行

今月の主題 いま知っておきたい食道良性疾患 序説

いま知っておきたい食道良性疾患

著者： 高木靖寛¹

所属機関： ¹地方独立行政法人芦屋中央病院内科

ページ範囲：P.233 - P.235

はじめに
　臨床の場で多く遭遇する食道腫瘍は悪性腫瘍である食道癌であり，拡大観察を含めた内視鏡診断は近年目まぐるしく進歩している．一方，食道の良性腫瘍および腫瘍様病変などの良性疾患は，GA（glycogenic acanthosis），乳頭腫，平滑筋腫を除きまれなものが多く，検査時に遭遇する機会は少ない．さらに食道良性疾患の多くは上皮に由来する病変ではなく，結合組織，神経組織や脈管などの非上皮性のものや炎症に関連した病態をとるものが多く，生検による病理組織学的検査に頼るだけではなかなか確定診断に結びつかない．
　これらのまれで特殊な食道疾患の領域にターゲットを絞った特集は，筆者が知る限り，書籍では「食道疾患レアケース・アトラス」（1999）^1），本誌では43巻3号「まれな食道良性腫瘍および腫瘍様病変」（2008）^2），51巻2号「まれな食道疾患の鑑別診断」（2016）^3），54巻10号「知っておきたい特殊な食道腫瘍・腫瘍様病変」（2019）^4）で取り上げられ，各疾患についてきれいな画像提示と詳細な解説がなされている．まれな疾患は多数例の経験が困難であり，容易に確定診断に至らないことも多いが，各病変は，その形態，色調や硬さ，発生部位などに特徴を有することも多く，それらを理解し知識を積み重ねていけば実臨床の場での診断能の向上に寄与すると考える．
　以下に本特集号で取り上げられた疾患の形態的特徴，要点について簡単に述べる．

参考文献

1）日本食道疾患研究会（編）．食道疾患レアケース・アトラス．医学書院，1999

2）【今月の主題】まれな食道良性腫瘍および腫瘍様病変．胃と腸　43：253-375, 2008

3）【今月の主題】まれな食道疾患の鑑別診断．胃と腸　51：155-245, 2016

4）【今月の主題】知っておきたい特殊な食道腫瘍・腫瘍様病変．胃と腸　54：1329-1462, 2019

5）高木靖寛，岩下明德，山田豊，他．消化管顆粒細胞腫の診断と治療．胃と腸　39：628-639, 2004

6）長谷部修，立岩伸之，石黒淳．食道びまん性平滑筋腫症．消内視鏡　26：1566-1567, 2014

7）門馬久美子，藤原純子，立石陽子，他．隆起を主体とする非上皮性病変の特徴と鑑別．胃と腸　51：174-189, 2016

8）Inoue T, Kato H, Ojima H, et al. Flat-type papilloma of the esophagus：a case report. Esophagus　2：217-219, 2005

9）前田有紀，平澤大，米地真，他．隆起を主体とする上皮性病変の特徴と鑑別．胃と腸　51：159-168, 2016

10）葉梨智子．食道に生える白い物体．消内視鏡　24：767-768, 2012

11）門馬久美子，前田有紀，梶原有史，他．食道pyogenic granulomaの1例．胃と腸　54：1452-1456, 2019

12）梅原靖彦，大久保忠俊，木村泰三．食道fibrovascular polyp．日本食道疾患研究会（編）．食道疾患レアケース・アトラス．医学書院，pp 46-49, 1999

13）蒲池紫乃，岩下明德，吉田道夫，他．食道の炎症性線維状ポリープ（inflammatory fibroid polyp）の1例．胃と腸　43：327-332, 2008

14）江副康正，武藤学，藤井誠志．食道epidermizationの2例．胃と腸　43：296-300, 2008

15）濱田健太，石原立，加藤穣，他．特異的な色調を示す病変の特徴と鑑別．胃と腸　51：228-235, 2016

16）本庶元，福田亘，三原美香，他．食道異所性皮脂腺の1例．胃と腸　43：301-304, 2008

17）井田陽介，岩男暁子，吉田武史．びまん性食道壁内偽憩室症．消内視鏡　26：1704-1705, 2014

18）宮岡正喜，高木靖寛．食道壁内偽憩室症．「胃と腸」編集委員会（編）．胃と腸アトラス—I 上部消化管，第2版．pp 19-21, 2014

19）大森泰，石井賢二郎，岡村明彦，他．自己免疫性水疱症と上部消化管病変の内視鏡診断．胃と腸　50：159-173, 2015

20）朝隈豊，松井繁長，樫田博史．食道メラノーシス．消内視鏡　26：1644-1645, 2014

21）竹内学，高橋亜紀子，小山恒男，他．食道悪性黒色腫とmelanosisの鑑別診断—特に平坦病変について．胃と腸　54：1377-1388, 2019