H. pylori未感染上皮性腫瘍の内視鏡的特徴—胃底腺型胃癌
著者:
上山浩也
,
松本紘平
,
八尾隆史
,
阿部大樹
,
沖翔太朗
,
鈴木信之
,
池田厚
,
谷田貝昴
,
小森寛之
,
赤澤陽一
,
竹田努
,
上田久美子
,
松本健史
,
浅岡大介
,
北條麻理子
,
永原章仁
ページ範囲:P.1006 - P.1021
要旨●H. pylori未感染胃癌の一つである胃底腺型胃癌(gastric adenocarcinoma of fundic-gland type)のNBI併用拡大観察を含む内視鏡診断体系について報告した.胃底腺型胃癌は,病理組織学的には胃底腺型腺癌と胃底腺粘膜型腺癌に分類され,今回,自施設で胃底腺型腺癌と診断された55病変を対象に内視鏡的特徴について検討した.白色光観察での内視鏡的特徴は,①SMT様の隆起性病変(60.0%),②褪色調・白色調(76.4%),③拡張した樹枝状の血管(58.2%),④背景粘膜に萎縮性変化なし(87.3%)の4所見で既報とほぼ同様であった.色調と肉眼型では,①白色調・隆起型(40.0%),②白色調・平坦/陥凹型(36.4%),③発赤調・隆起型(20.0%),④発赤調・平坦/陥凹型(3.6%)の4タイプに分類され,多様性があることが判明し,病理組織学的な考察とタイプ別の特徴を見いだした.H. pylori感染状況による比較では,感染状況により肉眼型の頻度に差があることが判明した.NBI併用拡大観察では,肉眼形態にかかわらず,①明瞭なDLなし(100%),②腺開口部の開大(59.6%),③窩間部の開大(90.4%),④irregularityに乏しい微小血管(80.8%)の4所見が高率に観察され,既報とほぼ同様であった.以上より,胃底腺型腺癌の内視鏡診断は,既報の白色光観察とNBI併用拡大観察の特徴を理解する必要がある.基本的にはH. pylori感染状況と色調・肉眼型を加味したうえで,内視鏡所見から表層の腫瘍成分の有無,表層の非腫瘍性粘膜と上皮下の腫瘍との関係性を推測することが,胃底腺粘膜型腺癌との鑑別も含めた胃底腺型腺癌の内視鏡診断につながると考えられた.