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文献詳細

雑誌文献

胃と腸55巻9号

2020年08月発行

文献概要

今月の主題 一度見たら忘れられない症例 主題

腐食性食道炎に発生した胸部食道癌

著者: 三浦昭順1 門馬久美子23 春木茂男1 鈴木邦士1 山口和哉1 塩原寛之1 前田有紀3 飯塚敏郎3 堀口慎一郎4 比島恒和4

所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院食道外科 2早期胃癌検診協会 3がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科 4がん・感染症センター都立駒込病院病理科

ページ範囲:P.1126 - P.1130

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臨床経過
 40歳代,男性.2歳時に苛性ソーダの誤飲により腐食性食道狭窄を発症.胃瘻造設術が施行された.その後,食事摂取は可能であったが,40歳代になり,胸部のつかえ感が増強したため近医を受診した.上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて食道狭窄を指摘され,食道拡張術目的に当科に紹介され受診となった.
 当院のEGDでは,切歯列より20〜26cmの食道粘膜は白濁し,血管が透見できず,多数の瘢痕を認めた(Fig.1a〜c).切歯列より26cmから食道狭窄が始まり,狭窄部の左壁〜後壁に1/2周程度の病変を認めた.左壁側は表面に付着物があり,一見盛り上がって見えたが,後壁側は境界が明瞭な陥凹性病変として観察され,病変は峡谷のような切り立った崖状を呈していた(Fig.1d〜f).細径scopeでの肛門側の観察では,左壁および後壁側の病変は,発赤した厚みのある病変として捉えられ,中央には深い溝状の陥凹がみられた(Fig.1g,i).しかし,NBI(narrow band imaging)近接観察では,病巣表面にB2血管らしき所見がみられ,前壁側には血管が増生するBA(brownish area)もみられた(Fig.1h).狭窄部にできた病変のため,病変が誇張されて見えている可能性も考慮し,MM-SMの表在癌と診断した.内視鏡が狭窄部を通過できないため,病変の全貌は確認できなかったが,ヨード染色にて不染を示す病変部の生検にて,扁平上皮癌と診断された(Fig.1f).

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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