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文献詳細

雑誌文献

胃と腸55巻9号

2020年08月発行

文献概要

今月の主題 一度見たら忘れられない症例 主題

ボーリング生検で診断したMALTリンパ腫成分を伴う隆起型胃びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫

著者: 赤松泰次12 下平和久2 宮島正行2 中村真一郎2 植原啓之2 木畑穣3 市川徹郎4 浅野直子5

所属機関: 1長野県立信州医療センター内視鏡センター 2長野県立信州医療センター消化器内科 3長野県立信州医療センター総合診療部 4長野県立信州医療センター病理・臨床検査科 5長野県立信州医療センター遺伝子検査科

ページ範囲:P.1137 - P.1140

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臨床経過
 患者は30歳代,男性.
 上腹部の不快感が続くため,近医で上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を受けたところ,胃に多発した隆起性病変を指摘されて当院を受診した.家族歴や既往歴に特記事項はなかった.当院でEGDを再検したところ,前庭部,胃角部大彎,胃体部,胃穹窿部に多発する粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT)様病変を散在性に認めた(Fig.1).一部の病変は表面に発赤とびらんがみられ,背景粘膜には萎縮の所見はみられなかった.細径プローブを用いた超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS)では,第2,3層に主座のある比較的均一な低エコー像を認め,第4層は保たれていた(Fig.2).以上より,悪性リンパ腫を疑った.さらに,明らかな潰瘍形成を伴わないことやEUSで病変が粘膜下層までにとどまることから低悪性度リンパ腫〔MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫〕の可能性が高いと考えられた.
 しかし,病変が広範囲に多発してみられ,低悪性度リンパ腫にしては内視鏡所見が“派手過ぎる”印象があった.隆起型胃MALTリンパ腫では,病変の深部に形質転化したびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma ; DLBCL)が存在することがあるため,胃角部大彎の病変(Fig.1b)からボーリング生検を行った.病変の表層から採取された生検組織の病理組織学的所見では,小型異型リンパ球の浸潤を認め,lymphoepithelial lesionがみられた(Fig.3).免疫組織化学染色でCD20,IRTA1(FCRL4)が陽性,BCL2が弱陽性,CD3,CD5,CD10が陰性であったことからMALTリンパ腫と診断された.一方,ボーリング生検で病変の深部から採取された生検組織の病理組織学的所見では,中型〜大型の異型リンパ球のびまん性浸潤を認め(Fig.4),Ki-67染色では表層のMALTリンパ腫の部分に比べて明らかな陽性細胞の増加が観察され(Fig.5),DLBCLと診断された.AP12-MALT1染色体転座は認めなかった.

参考文献

1)Isaacson P, Wright DH. Malignant lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue:a distinctive type of B-cell lymphoma. Cancer 52:1410-1416, 1983
2)Akamatsu T, Mochizuki T, Okiyama Y, et al. Comparison of localized gastric mucosa-associated lymphoid tissue(malt)lymphoma with and without Helicobacter pylori infection. Helicobacter 11:86-95, 2006
3)赤松泰次,沖山葉子,宮林秀晴,他.胃MALTリンパ腫の診断と治療—除菌治療抵抗例と低線量放射線療法の長期経過.胃と腸 49:623-634, 2014
4)赤松泰次,下平和久,野沢祐一,他.消化管原発悪性リンパ腫の内視鏡所見の特徴.消内視鏡 27:754-760, 2015
5)Nakamura S, Sugiyama T, Matsumoto T, et al. Long-term clinical outcome of gastric MALT lymphoma after eradication of Helicobacter pylori:a multicentre cohort follow-up study of 420 patients in Japan. Gut 61:507-513, 2012
6)赤松泰次,長屋匡信,菅智明.除菌治療抵抗性胃MALTリンパ腫の治療—低線量放射線療法の有用性と問題点.消内視鏡 31:100-104, 2019
7)赤松泰次,須澤兼一,金子靖典,他.限局性胃MALTリンパ腫の長期経過—除菌療法抵抗例の臨床的特徴とその対策.胃と腸 42:1207-1216, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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