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文献詳細

雑誌文献

胃と腸55巻9号

2020年08月発行

文献概要

今月の主題 一度見たら忘れられない症例 主題

好酸球性胃腸炎

著者: 増永哲平1 辻国広1 土山寿志1

所属機関: 1石川県立中央病院消化器内科

ページ範囲:P.1155 - P.1157

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臨床経過
 [症例1] 50歳代,女性.
 心窩部痛を主訴に当院を受診した.既往歴・アレルギー歴・家族歴に特記事項はなかった.常用薬はなかったが,生理痛のためにロキソプロフェンの頓服を行うことがあった.血液検査ではヘモグロビン値9.8g/dlと貧血があったが,好酸球数を含めその他に異常所見は認めず,血清H. pylori(Helicobacter pylori)IgG抗体も陰性であった.
 上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)では胃前庭部に浅い潰瘍が多発していたが(Fig.1a),他の消化管に異常はなかった.非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs ; NSAIDs)による消化性潰瘍を疑い,ボノプラザン20mg/dayの投薬を開始したところ,症状は速やかに改善し,1か月後のEGDで潰瘍の瘢痕化を確認した(Fig.1b).しかし,瘢痕部からの生検で高度の好酸球浸潤を認めたため(Fig.1c),好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis ; EGE)と確定診断した.3か月後にもフォローアップの内視鏡検査を施行したが,潰瘍の再燃は認めなかった.

参考文献

1)増永哲平,辻国広,川崎梓,他.十二指腸潰瘍が診断の契機になった好酸球性胃腸炎の1例.石川中病医誌 38:15-20, 2016
2)Kinoshita Y, Oouchi S, Fujisawa T. Eosinophilic gastrointestinal diseases:pathogenesis, diagnosis, and treatment. Allergol Int 68:420-429, 2019
3)三浦優子,岩本史光,石田泰章,他.難治性十二指腸潰瘍を呈した若年性好酸球性胃腸炎の1例.日消誌 116:668-675, 2019
4)西下正和,仲田文造,江頭由太郎,他.難治性多発性深掘れ潰瘍を呈した好酸球性胃腸炎の1例.胃と腸 48:1931-1937, 2013
5)Jensen ET, Martin CF, Kappelman MD, et al. Prevalence of eosinophilic gastritis, gastroenteritis, and colitis:estimates from a national administrative database. J Pediatr Gastroenterol Nutr 62:36-42, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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