文献詳細
今月の主題 一度見たら忘れられない症例
主題
広範囲粘膜脱落を呈する潰瘍性大腸炎
著者: 大川清孝1 佐野弘治1 宮野正人1 山口誓子1 倉井修1
所属機関: 1大阪市立十三市民病院消化器内科
ページ範囲:P.1162 - P.1165
文献概要
患者は40歳代,男性.
下痢が出現して徐々に増強し,発熱も出現してきたため,近医を受診し,急性腸炎と診断され入院した.感染性腸炎の疑いで抗菌薬投与と絶食にて1週間以上経過観察されていた.しかし,症状が軽快せず,腹部単純X線検査で腸管の拡張も増強してきたため,当院へ転院となった.
入院時の腹部単純X線検査では大腸および小腸の著明な拡張がみられた(Fig.1).血液検査はWBC 15,600/μl,RBC 434×104/μl,Hb 12.9g/dl,TP 4.6g/dl,Alb 1.6g/dl,CRP 24.4mg/dl,ESR 44mm/hであり,著明な炎症反応の上昇と低蛋白血症を認めた.診断目的で緊急内視鏡を施行した.S状結腸遠位側には粘膜の著明な脱落がみられ,ごくわずかの粘膜残存を島状に認め,縦列していた(Fig.2).粘膜脱落部に,筋層と思われる線維構造がみられた(Fig.2a,d).これ以上近位側への挿入は危険と考え,内視鏡を抜去した.直腸には小びらんがびまん性にみられ(Fig.3a),潰瘍性大腸炎と考えられる像であったが,一部では正常粘膜がみられた(Fig.3b).中毒性巨大結腸症を合併した重症の潰瘍性大腸炎と考えたが,このような内視鏡像の経験はなく,生検病理組織学的診断結果を待つ必要があると考え,ステロイドパルス療法を開始した.
参考文献
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