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文献詳細

雑誌文献

胃と腸55巻9号

2020年08月発行

文献概要

今月の主題 一度見たら忘れられない症例 主題

消化管GVHD

著者: 小村成臣1 小山恵司1 尾﨑隼人1 前田晃平1 大森崇史1 堀口徳之1 城代康貴1 鎌野俊彰1 大久保正明1 舩坂好平1 長坂光夫1 中川義仁1 柴田知行1 大宮直木1

所属機関: 1藤田医科大学医学部消化器内科学I

ページ範囲:P.1171 - P.1174

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臨床経過
 患者は30歳代,女性.
 10歳時に1型糖尿病を発症し,インスリンで加療するも慢性腎不全となり透析が導入され,30歳時に脳死膵腎同時移植が施行された.その後ステロイド,タクロリムス,ミコフェノール酸モフェチルなど内服.移植2年後に下痢が6週間持続するため当科に紹介され受診となった.大腸内視鏡検査にて,回腸末端にアフタの散在を認め(Fig.1a),盲腸には輪状傾向の幅の狭い潰瘍や瘢痕(Fig.1b),散在性に不整形びらん(Fig.1c,d)を認めた.盲腸からS状結腸にかけては血管透見消失像(Fig.1e〜g),orange peel appearanceが観察された.
 生検病理組織学的所見は,盲腸から上行結腸では好酸球やリンパ球,形質細胞を主体とした高度の炎症細胞浸潤と陰窩の減少,萎縮がみられた(Fig.2a).残存する陰窩には再生性の増生がみられ(Ki-67陽性細胞増加),アポトーシスが散見された(Fig.2b).横行結腸から下行結腸では腺底部にポップコーン状のアポトーシス(γ-H2AX免疫染色陽性)がみられ,同様の高度炎症と陰窩の萎縮を認めた.Ziehl-Neelsen染色は陰性,DFS(direct fast scarlet)染色陰性,サイトメガロウイルス(cytomegalovirus ; CMV)感染陽性像はなく,病理組織学的に移植片対宿主病(graft-versus-host disease ; GVHD)に矛盾しない所見であった.以上より消化管GVHDと診断し,膵酵素製剤の補充療法を行ったところ,下痢は改善し退院となった.

参考文献

1)日本造血細胞移植学会.造血細胞移植ガイドラインGVHD,第4版.2018
2)岩男泰,矢島知治,泉谷幹子,他.代表的な免疫異常における消化管病変の特徴—消化管GVHD.胃と腸 40:1172-1184, 2005
3)小野尚子,加藤元嗣,久保田佳奈子,他.Graft-versus-host diseaseの消化管病変.胃と腸 46:283-293, 2011
4)稲本賢弘.移植後長期フォローアップと慢性GVHD.日造血細胞移植会誌 6:84-97, 2017
5)南谷泰仁.造血幹細胞移植の副作用と対策—移植片対宿主病(GVHD)(病態,予防,治療)—慢性GVHD.日臨 74(Suppl 10):371-379, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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