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今月の主題 内視鏡医も知っておくべき病理診断リファレンス—下部消化管腫瘍 主題アトラス
大腸:低分化腺癌(印環細胞癌を含む)
著者: 新井冨生1
所属機関: 1東京都健康長寿医療センター病理診断科
ページ範囲:P.308 - P.311
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低分化腺癌は,腺癌のうち管腔形成が乏しいものあるいは腺管形成が陰性でも細胞内粘液が陽性のものを言う1).ただし,腫瘍細胞が,①印環細胞としての形態を示すこと,②印環細胞癌が腫瘍の約1/2以上を占めること,③腺管形成が不明瞭であること,④粘液産生部位が腫瘍の1/2以下であること,⑤他臓器印環細胞癌(特に胃癌)の転移を除外すること,の診断基準を満たす腫瘍は印環細胞癌に分類される.また,管腔形成が乏しく低分化腺癌の範疇に入る腫瘍でも,髄様癌,内分泌細胞癌の特徴を示す腫瘍は低分化腺癌から除外する.低分化腺癌は癌胞巣の形態から充実型(por1)と非充実型(por2)に分類される.
従来,大腸低分化腺癌には髄様癌が含まれていた.しかし,髄様癌がWHO分類 第3版(2000年)2)および「大腸癌取扱い規約 第8版」(2013年)3)において一つの独立した組織型として分類されたことにより,低分化腺癌から除外された.このように,同じ“低分化腺癌”という用語でも,その病態の捉え方は時代とともに変化してきた.しかし,新しい規約分類に基づいた低分化腺癌の知見はまだ十分ではなく,大腸低分化腺癌について検討した報告は多少なりとも髄様癌が含まれていると思われる.
低分化腺癌は,腺癌のうち管腔形成が乏しいものあるいは腺管形成が陰性でも細胞内粘液が陽性のものを言う1).ただし,腫瘍細胞が,①印環細胞としての形態を示すこと,②印環細胞癌が腫瘍の約1/2以上を占めること,③腺管形成が不明瞭であること,④粘液産生部位が腫瘍の1/2以下であること,⑤他臓器印環細胞癌(特に胃癌)の転移を除外すること,の診断基準を満たす腫瘍は印環細胞癌に分類される.また,管腔形成が乏しく低分化腺癌の範疇に入る腫瘍でも,髄様癌,内分泌細胞癌の特徴を示す腫瘍は低分化腺癌から除外する.低分化腺癌は癌胞巣の形態から充実型(por1)と非充実型(por2)に分類される.
従来,大腸低分化腺癌には髄様癌が含まれていた.しかし,髄様癌がWHO分類 第3版(2000年)2)および「大腸癌取扱い規約 第8版」(2013年)3)において一つの独立した組織型として分類されたことにより,低分化腺癌から除外された.このように,同じ“低分化腺癌”という用語でも,その病態の捉え方は時代とともに変化してきた.しかし,新しい規約分類に基づいた低分化腺癌の知見はまだ十分ではなく,大腸低分化腺癌について検討した報告は多少なりとも髄様癌が含まれていると思われる.
参考文献
1)大腸癌研究会(編).大腸癌取扱い規約,第9版.金原出版,2018
2)Hamilton SR, Aaltonen LA(eds). World Health Organization of Tumours. Pathology & Genetics of Tumours of the Digestive System. IARC press, Lyon, 2000
3)大腸癌研究会(編).大腸癌取扱い規約,第8版.金原出版,2013
4)西村洋治,関根毅,小林照忠,他.稀な大腸悪性腫瘍の臨床病理学的検討—第54回大腸癌研究会アンケート調査報告.日本大腸肛門病会誌 57:132-140, 2004
5)Makino T, Tsujinaka T, Mishima H, et al. Primary signet-ring cell carcinoma of the colon and rectum:report of eight cases and review of 154 Japanese cases. Hepatogastroenterology 53:845-849, 2006
6)新井冨生,松田陽子,関敦子,他.知っておきたい特殊な大腸腫瘍—髄様癌Medullary carcinoma.病理と臨 34:1080-1084, 2016
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