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文献詳細

雑誌文献

胃と腸56巻3号

2021年03月発行

文献概要

今月の主題 内視鏡医も知っておくべき病理診断リファレンス—下部消化管腫瘍 主題アトラス

大腸:髄様癌

著者: 新井冨生1

所属機関: 1東京都健康長寿医療センター病理診断科

ページ範囲:P.317 - P.320

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定義・概念
 髄様癌は2000年に出版されたWHO分類 第3版で初めて記載された比較的新しい概念の腫瘍であり1),それまでは低分化腺癌として取り扱われてきた.低分化腺癌は一般的に悪性度が高く予後不良とされているが,大腸癌では充実胞巣型,髄様型を示す低分化腺癌の一部に比較的予後良好な症例が存在することが指摘されてきた.その後,分子病理学的手法を用いた研究が進み,髄様癌の疾患概念が確立した.この研究が進む過程で髄様癌は種々の名称が用いられていたが,WHO分類 第3版1)が出版されてからはmedullary carcinomaに統一された.本邦では2013年8月に改訂された「大腸癌取扱い規約 第8版」2)で,髄様癌という名称で初めて記載された.
 髄様癌は発癌機序の観点から散発性と遺伝性の2種類に大別される.散発性の髄様癌は高齢者,女性,右側結腸に好発し,リンパ節転移も低率で比較的予後良好という臨床病理学的特徴を示す3).分子病理学的には,BRAF遺伝子変異,ミスマッチ修復遺伝子の一つであるMLH1遺伝子のプロモーター領域のメチル化とそれに伴うMLH1蛋白質発現の減弱,マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability;MSI)という特徴を有する.遺伝性の髄様癌は,ミスマッチ修復遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2など)の変異によるLynch症候群の一つの病型としての腫瘍である.

参考文献

1)Hamilton SR, Aaltonen LA(eds). World Health Organization of Tumours, Pathology & Genetics of Tumours of the Digestive System. IARC press, Lyon, 2000
2)大腸癌研究会(編).大腸癌取扱い規約,第8版.金原出版,2013
3)Arai T, Esaki Y, Sawabe M, et al. Hypermethylation of the hMLH1 promoter with absent hMLH1 expression in medullary-type poorly differentiated colorectal adenocarcinoma in the elderly. Mod Pathol 17:172-179, 2004
4)新井冨生,櫻井うらら,沢辺元司,他.髄様型大腸低分化腺癌の病理学的特徴.胃と腸 45:1837-1846, 2010
5)Nguyen J, Coppola D, Shan Y, et al. Poorly differentiated medullary carcinoma of the colon with an unusual phenotypic profile mimicking high grade large cell lymphoma—a unique case report and review of the literature. Int J Clin Exp Pathol 7:828-834, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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