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文献詳細

雑誌文献

胃と腸56巻3号

2021年03月発行

文献概要

今月の主題 内視鏡医も知っておくべき病理診断リファレンス—下部消化管腫瘍 主題アトラス

肛門:肛門管癌・痔瘻癌

著者: 児玉真1 山名哲郎2 岡本欣也2 古川聡美2 阿部佳子1 八尾隆史3

所属機関: 1東京山手メディカルセンター病理診断科 2東京山手メディカルセンター大腸・肛門病センター 3順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学講座

ページ範囲:P.336 - P.339

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概念・定義
 肛門管とは,「大腸癌取扱い規約」1)では,恥骨直腸筋付着部位上縁より肛門縁(有毛皮膚との接合部)までの管状部と定義され,外科的肛門管と同一であり,肛門管から発生する癌を,肛門管癌と称する.肛門管癌の発生頻度は,本邦では10万人あたり0.3人であるのに対し,米国では10万あたり1.3人であり,本邦における肛門管癌の発症率は米国と比較し低い2).また,肛門管癌の組織型において,本邦では腺癌が多いのに対し,欧米では扁平上皮癌が多く,本邦と欧米では肛門管に発生する癌腫の組織型の頻度も異なっている2)3)

 痔瘻癌は肛門管癌の一つであり,既往の痔瘻を発生母地とする.典型的には長期の痔瘻から発生するが,比較的短期の痔瘻からの発生も報告されている4).組織型としては粘液癌が最も多く,大部分は腺癌であり,本邦の取扱い規約においては腺癌に分類されている1).ただし,扁平上皮癌が生じることもある.肛門管領域では腺癌は管内型と管外型に分類されるが,直腸型腺癌が管内型に分類されるのに対し,痔瘻癌は管外型腺癌に分類される.しばしばCrohn病に合併し,Crohn病に合併する痔瘻癌は,特発性痔瘻癌と比較し,その臨床病理学的特徴が異なる4)

参考文献

1)大腸癌研究会(編):大腸癌取扱い規約,第9版.金原出版,2018
2)Islami F, Ferlay J, Lortet-Tieulent J, et al. International trends in anal cancer incidence rates. Int J Epidemiol 46:924-938, 2017
3)鮫島伸一,澤田俊夫,長廻紘.本邦における肛門扁平上皮癌,痔瘻癌の現況,第59回大腸癌アンケート調査報告.日本大腸肛門病会誌 58:415-421, 2005
4)Kodama M, Kobayashi D, Iihara K, et al. Adenocarcinoma within anorectal fistulae:different clinicopathological characteristics between Crohn's disease-associated type and the usual type. Mod Pathol 32:314-325, 2019
5)Salati SA, Kadi AA. Anal cancer-a review. Int J Health Sci 6:206-230, 2012
6)Sun G, Dong X, Tang X, et al. The prognostic value of HPV combined p16 status in patients with anal squamous cell carcinoma:a meta-analysis. Oncotarget 9:8081-8088, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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