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今月の主題 内視鏡医も知っておくべき病理診断リファレンス—下部消化管腫瘍 主題アトラス
下部消化管を通じて:T細胞リンパ腫
著者: 二村聡1 田邉寛1 小野貴大2 太田敦子3 久部高司4 岩下明德5
所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理部・病理診断科 2福岡大学筑紫病院炎症性腸疾患センター 3福岡大学筑紫病院臨床検査部 4福岡大学筑紫病院消化器内科 5AII病理画像研究所
ページ範囲:P.359 - P.362
文献購入ページに移動T細胞リンパ腫はT細胞(Tリンパ球)を正常対応細胞とするリンパ系腫瘍と定義される.これに基づくと,同疾患は未熟T細胞に近い性質を示す腫瘍細胞から成るTリンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-lymphoblastic leukemia/lymphoma)と,より分化した成熟T細胞に近い性質を示す腫瘍細胞から成る末梢性T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma;PTCL)に大別される.2016年に概要が公表され1),翌2017年に公刊された最新のWHO分類2)に掲載されているT細胞リンパ腫の病型・疾患単位の多くは,このPTCLに帰属する.なお,末梢性という用語はT細胞の分化・成熟段階において末梢に位置し,より分化・成熟しているという意味で使われており,決して腫瘍の発生部位を意味するものではない.
他稿で解説されているB細胞リンパ腫の各病型は,B細胞の生物学的な各分化段階と明確に関連づけられており,その分類はかなり整然としている.一方,胸腺以降の末梢性T細胞の細胞形態やリンパ組織における分布域はT細胞の分化段階とはあまり関連しておらず,T細胞リンパ腫では正常対応細胞が細胞形態学的にも免疫組織化学的にも容易に識別できない.このことがT細胞リンパ腫の分類をいっそう困難にしている.
参考文献
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