文献詳細
文献概要
増刊号 消化管診断・治療手技のすべて2021 大腸 治療
per-anal endoscopic myectomy
著者: 鴫田賢次郎1 永田信二2
所属機関: 1広島市立安佐市民病院内視鏡内科 2広島市立安佐市民病院消化器内科
ページ範囲:P.768 - P.769
文献購入ページに移動下部直腸(Rb)腫瘍に対する外科手術において,人工肛門造設や術後の肛門機能の低下,手術自体の偶発症などの問題を考慮するとover surgeryを避けることは重要であり,内視鏡治療の適応拡大が議論されてきた.腸管の筋層は内輪筋と縦走筋の2層構造になっているが,肛門近傍のRbは縦走筋の厚みがあるため内輪筋まで切除しても全層切除にはならず,さらにRbは腹膜反転部より肛門側に位置するため腹腔内へ穿孔する危険性がない.近年,Rb腫瘍を内輪筋まで含めて内視鏡的に切除するPAEM(per-anal endoscopic myectomy)という手技をToyonagaら1)2)が報告しており,この術式は筋層のラインで切除を行うため,粘膜下層の病変であれば確実に切除断端が陰性で切除できることが期待される.当院でのPAEMの適応は,院内倫理委員会の認定を受けたうえ,①腫瘍と筋層の距離が近接しているcT1b癌,②線維化を伴ったcTis癌,③粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT)など,従来の内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)ではデバイスの熱焼灼により切除断端(垂直断端)が陽性/不明となる可能性がある症例としている3).ただし,Rb前壁側の病変は解剖学的に膀胱や子宮と近く,腸管周囲の脂肪組織も少ないため,現時点では適応から除外している.
参考文献
掲載誌情報