icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸56巻6号

2021年05月発行

今月の主題 上部消化管非腫瘍性ポリープの内視鏡所見と病理所見

序説

上部消化管の非腫瘍性ポリープとは

著者: 二村聡1

所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理部・病理診断科

ページ範囲:P.797 - P.798

文献概要

 上部消化管に発生する非腫瘍性ポリープを確実に診断するための方法を習得したい.しっかりとした根拠をもってポリープを鑑別したい.おそらく多くの読者諸氏がそうした思いをもって,本特集号を手に取ってくださったと想像している.確かに,ありとあらゆる種類・組織型のポリープをこの目で見つけ,摘除し,その病理組織像を強く記憶にとどめておけば,ポリープの鑑別診断は容易となるかもしれない.しかし,日常診療の中で遭遇するポリープの種類は限られている.つまり,自ら経験できるポリープの種類は限られている.例えば,炎症性線維性ポリープ(inflammatory fibroid polyp ; IFP)や化膿性肉芽腫(pyogenic granuloma)は“遭遇頻度の低い(あまり見かけない)ポリープ”と認識しているだろう.一方,胃底腺ポリープや過形成性ポリープは“遭遇頻度の高い(ありふれた)ポリープ”として認識しているはずである.すなわち,われわれは自身の経験に照らして,“common”か“unusual”か“uncommon”か“rare”かを判断している.その名称は知っているが,遭遇したことがないポリープは1つや2つではなかろう.
 そこで,今回は上部消化管に発生する非腫瘍性ポリープに特化して,好発部位や病態・組織発生はもちろんのこと,その内視鏡所見と病理組織学的所見の要点を俯瞰できるように企画した.言うまでもなく,非腫瘍性病変と判断する行為は,腫瘍性病変を除外する行為にほかならない.この鑑別診断には判断材料と判断基準が必要である.すなわち,適切な判断根拠が必要なのである.診療の現場では,腫瘍か非腫瘍かの鑑別が常に要求され,その判断を大きく誤ると,過剰治療や医療過誤につながることもある.したがって,正しい診断を導くために必要な所見(判断材料)と,信頼に足る客観的な基準(判断基準)を深く理解しておくことは極めて重要である.そして,当該ポリープの臨床的特徴,例えばIFPは胃では幽門腺領域(前庭部)に好発することなどを熟知しておく必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら