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文献詳細

雑誌文献

胃と腸56巻6号

2021年05月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管非腫瘍性ポリープの内視鏡所見と病理所見 主題

胃の非腫瘍性ポリープの内視鏡所見

著者: 入口陽介1 小田丈二1 冨野泰弘1 依光展和1 園田隆賀12 岸大輔1 橋本真紀子1 中河原亜希子1 清水孝悦1 霧生信明1 水谷勝3 山里哲郎3 並木伸4 山村彰彦5 細井董三1

所属機関: 1東京都がん検診センター消化器内科 2熊本大学病院消化器内科 3東京都保健医療公社荏原病院消化器内科 4東京都立多摩総合医療センター消化器内科 5東京都がん検診センター検査科

ページ範囲:P.817 - P.827

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要旨●胃の非腫瘍性病変のうち,(亜)有茎性のポリープの形態を呈した,胃底腺ポリープ(FGP),過形成性ポリープ(HP),若年性ポリープ(JP),炎症性線維性ポリープ(IFP),異所性膵(EP),異所性胃腺(HGM)を,H. pylori感染の有無やA型胃炎などの背景粘膜別に症例を中心に解説した.H. pylori感染率が高かった時代はHPが最も多かったが,感染率の低下に伴いFGPの発見頻度が高くなっている.さらにH. pylori未感染胃に発赤調ポリープを認めた場合,腺窩上皮型HPなどの非腫瘍性ポリープとラズベリー型胃癌や胃底腺型腺癌を鑑別する必要がある.またHPとその他のポリープとの鑑別診断が難しい症例もあるが,HPは隆起全体に背景粘膜の表面構造に類似した腺窩上皮や窩間部の開大などの過形成性変化を認め,JPは分葉傾向が乏しく棍棒状で表面平滑,IFPはSMT様隆起で頂部に炎症性びらんを伴うことがある.EPは,前庭部ではdelleを伴うSMTの典型的な形態を呈しているが,胃体部では丈の高いSMT様隆起や平板状隆起を呈するためGISTなどとの鑑別診断が難しく,EUSでは固有筋層の肥厚所見を呈することが多い.HGMは,H. pylori感染胃では胃体部に多発するびまん型,未感染胃では穹窿部に有茎性の孤発型を認める.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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