胃と腸56巻7号

2021年06月発行

早期胃癌研究会症例

1年間で著明な形態変化を認め，最終的に進行癌であった胃型低異型度分化型胃癌の1例

著者： 児玉亮¹ 牛丸博泰¹ 川口研二² 安藤皓一郎¹ 柳澤匠¹ 三枝久能¹ 牧野睦月²

所属機関： ¹JA長野厚生連南長野医療センター篠ノ井総合病院消化器内科 ²JA長野厚生連南長野医療センター篠ノ井総合病院病理診断科

ページ範囲：P.989 - P.999

文献概要

要旨●患者は70歳代，男性．10年前に早期胃癌に対してESDを受け，以後1年ごとにEGDで経過観察をされていた．1年前のEGDで胃穹窿部大彎に10mm程度の扁平隆起性病変を認めたが，生検病理組織学的診断でGroup 2と診断されたため経過観察となった．今回同病変は20mm大の半球状の隆起性病変に増大し，NBI拡大観察では境界明瞭で大小不同を有する不整なvilli様構造を呈していた．生検病理組織学的診断ではGroup 4と診断され，ESDを行った．病理組織像では表層は腺窩上皮型の異型の乏しい腺癌で，粘膜下に浸潤していた．細胞形質はMUC5AC，MUC6陽性で，胃型低異型度分化型胃癌と診断した．深部断端陽性で脈管侵襲を認めたため追加手術を行った．

参考文献

1）海崎泰治，青柳裕之，波佐谷兼慶，他．胃型形質の低異型度分化型胃癌の悪性度．胃と腸　53：61-68, 2018

2）田邉寛，岩下明德，池田圭祐，他．胃底腺型胃癌の病理組織学的特徴．胃と腸　50：1469-1479, 2015

3）濱本英剛，村上雄紀，鈴木雄一郎，他．胃型形質の低異型度分化型胃癌の通常内視鏡診断—拾い上げ診断．胃と腸　53：28-41, 2018

4）渡辺英伸，加藤法導，渕上忠彦，他．微小胃癌からみた胃癌の発育経過—病理形態学的解析．胃と腸　27：59-67, 1992

5）荒尾真道，上堂文也，大森正泰，他．EMRで診断しえた4型を呈した低異型度分化型胃癌の1例．胃と腸　53：108-115, 2018

6）Liu G, Xiong D, Zeng J, et al. Clinicopathological and prognostic significance of Ki-67 immunohistochemical expression in gastric cancer：a systematic review and meta-analysis. Onco Targets Ther　10：4321-4328, 2017

7）Luo G, Hu Y, Zhang Z, et al. Clinicopathologic significance and prognostic value of Ki-67 expression in patients with gastric cancer：a meta-analysis. Oncotarge　8：50273-50283, 2017

8）松永千佳，馬場保昌，牟田仁彦，他．粘膜下腫瘍様形態を呈した胃型の分化型胃癌（進行1型＋IIa型）の1例．胃と腸　34：567-572, 1999

9）藤澤貴史，阪本哲一，坂口一彦，他．2年間内視鏡的に経過観察した胃型分化型進行胃癌の1例．Gastroenterol Endosc　44：1692-1698, 2002

10）長浜隆司，八巻悟郎，大倉康男，他．組織異型が弱く2年7か月経過観察を行った胃型分化型sm胃癌の1例．胃と腸　38：723-732, 2003

11）木村次宏，本郷仁志，中村圭也，他．粘膜下腫瘍様形態を呈し7年間経過観察された高分化型早期胃癌の1例．Gastroenterol Endosc　48：1563-1568, 2006

12）三富弘之，大倉康男．病理学的に逆追跡可能な早期胃癌症例の解析—多施設症例の検討．胃と腸　43：1784-1797, 2008

13）入口陽介，小田丈二，水谷勝，他．内視鏡経過例における早期胃癌発育の遡及的検討—粘液形質からみて．胃と腸　43：1752-1763, 2008

14）小田丈二，水谷勝，入口陽介，他．急速に発育しSM massive以深に浸潤した胃癌の臨床病理学的検討．消化器科　49：149-153, 2009