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文献詳細

雑誌文献

胃と腸56巻8号

2021年07月発行

文献概要

今月の主題 早期大腸癌内視鏡治療の新展開 主題

大腸T1癌内視鏡的切除標本の正しい取り扱いと病理組織診断—脈管侵襲評価のポイントとピットフォール

著者: 伴慎一1

所属機関: 1獨協医科大学埼玉医療センター病理診断科

ページ範囲:P.1083 - P.1091

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要旨●大腸T1癌における病理組織学的なリンパ管侵襲,静脈侵襲の所見はしばしば微細な変化であり,その十分な認識のためには,侵襲の対象となる脈管の部位や,病理組織学的所見,脈管侵襲評価の精度と限界に関わる要因についての理解が必要である.リンパ管侵襲は,腔縁に内皮細胞が明確に確認できる場合にはHE染色標本上でも認識が容易であるが,内皮細胞が不明瞭な空隙を癌細胞塊周囲にみる場合や,腔内に塞栓状の侵襲を来している場合は,D2-40を用いた免疫組織化学染色による内皮細胞の存在の確認が必要となる.一方,静脈侵襲は通常,脈管腔内を占める形で生じ,内皮細胞を確認できなくなるため,内皮細胞マーカーの免疫組織化学染色は有用でない.HE染色標本上での静脈壁の認識もしばしば困難となるため,癌細胞塊周囲を静脈壁の弾性線維層が取り囲んでいることを弾性線維染色により確認する必要がある.その際,伴走する動脈の存在は有用な所見となる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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