除菌後発見胃癌の内視鏡診断—狭帯域光拡大観察の見地から:VS classification systemの有用性
著者:
今村健太郎
,
八尾建史
,
二村聡
,
田邉寛
,
金光高雄
,
宮岡正喜
,
大津健聖
,
小野陽一郎
,
宇野駿太郎
,
平塚裕也
,
麻生頌
,
植木敏晴
,
小野貴大
,
太田敦子
,
原岡誠司
,
岩下明德
ページ範囲:P.61 - P.73
要旨●目的と方法:2020年5月〜2021年6月までの期間に当科でESDまたは外科的切除を施行された早期胃癌全病変のうち,H. pylori除菌後発見早期胃癌(除菌後胃癌),H. pylori現感染早期胃癌(現感染胃癌)と判定され,術前の内視鏡所見の検討が可能であった病変を抽出し,両病変における内視鏡診断能を比較した.結果:VS classification systemを用いたNBI併用拡大内視鏡(M-NBI)観察の診断能は,除菌後胃癌92%,現感染胃癌93%であり,統計学的有意差は認めなかった.CS classification systemを用いた色素内視鏡(CE)を含めた白色光通常内視鏡(C-WLI)による診断能を解析した結果,除菌後胃癌89%,現感染胃癌90%であった.また,水平方向発育範囲(範囲診断)に対してのM-NBIとC-WLI+CEの診断能を比較したが,両群間に差は認めなかった.低異型度高分化管状腺癌とそれ以外の病変別に同様の検討を行ったが,両群ともに,低異型度高分化管状腺癌に対する質的診断能が低い,または,低い傾向を示した.癌巣内の非癌上皮の有無別にも同様の検討を行ったが,両群ともに,広く非癌上皮で被覆されている病変に対する範囲診断能が低い,または,低い傾向を示した.結語:VS classification systemを用いたM-NBIの除菌後胃癌と現感染胃癌に対する診断能は,両群において差がないことが判明した.また,診断能を低下させる要因は,除菌の有無ではなく,低異型度高分化管状腺癌または非癌上皮に広く被覆された腫瘍組織構築であった.