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胃と腸57巻12号

2022年11月発行

雑誌目次

今月の主題 胃型形質を示す胃・十二指腸上皮性腫瘍 序説

胃型形質を示す胃・十二指腸腫瘍—疾患概念の略史と今日的分類

著者: 九嶋亮治

ページ範囲:P.1495 - P.1498

胃の胃型腫瘍
 “腫瘍細胞・組織は発生母地の形態・機能を模倣する”のが腫瘍病理学の基本であり,例えば肝臓や腎臓に発生する癌腫は肝細胞癌や腎細胞癌と呼ばれる.しかし,胃に発生する上皮性腫瘍を“胃型○○”と称することは長い間一般的ではなかった.筆者は1980年代から“胃型”という形容にこだわった仕事をしてきた.

主題

—胃型形質を示す胃上皮性腫瘍の内視鏡的特徴—腺窩上皮型腫瘍—一般型腺窩上皮型腫瘍

著者: 福山知香 ,   平澤俊明 ,   河内洋 ,   中野薫 ,   山本浩之 ,   熊澤佑介 ,   渡邊昌人 ,   小林輝 ,   並河健 ,   渡海義隆 ,   吉水祥一 ,   堀内裕介 ,   由雄敏之 ,   石山晃世志 ,   藤崎順子

ページ範囲:P.1499 - P.1507

要旨●胃腺窩上皮型腫瘍は,胃粘膜を被覆する腺窩上皮細胞への分化を示す腫瘍細胞を主成分とするが,頸部粘液細胞(副細胞)への分化を示す腫瘍細胞が混在することもある.主にH. pylori未感染や除菌後の萎縮のない胃底腺粘膜領域に発生し,その内視鏡的特徴から,一般型,ラズベリー型に分けられる.一般型胃腺窩上皮型腫瘍の内視鏡所見は,白色光で白色〜同色調を示す平坦もしくは扁平な隆起性病変が多い.NBI併用拡大観察では,乳頭状・弧状・畝状の微小腺管構造を呈し,腺窩辺縁上皮の幅が広く,irregular microvascular patternを呈することが多い.本稿ではその内視鏡的特徴を解説し,一般型胃腺窩上皮型腫瘍とともに,鑑別疾患として腺窩上皮型過形成性ポリープ,多発性白色扁平隆起の自験例をそれぞれ提示した.

—胃型形質を示す胃上皮性腫瘍の内視鏡的特徴—腺窩上皮型腫瘍—H. pylori未感染粘膜発生のラズベリー様ポリープ型腫瘍

著者: 谷田貝昂 ,   上山浩也 ,   岩野知世 ,   内田涼太 ,   宇都宮尚典 ,   阿部大樹 ,   沖翔太朗 ,   鈴木信之 ,   池田厚 ,   赤澤陽一 ,   竹田努 ,   松本紘平 ,   八尾隆史 ,   永原章仁

ページ範囲:P.1509 - P.1519

要旨●H. pylori未感染胃に発生するラズベリー様ポリープ型腫瘍の臨床病理学的・内視鏡的特徴について,非癌病変との鑑別点を含めて報告した.当院で内視鏡治療を施行したH. pylori未感染胃に発生したラズベリー様外観を呈する胃癌(RSGC)は,病理組織学的に腺窩上皮型腺癌,胃底腺型腺癌,胃底腺粘膜型腺癌の3種類に分類された.各々の内視鏡的特徴は,各病理組織学的所見を反映しており,RSGCの正確な診断と適切な治療法の選択には各組織型における内視鏡的特徴および臨床病理学的特徴を熟知する必要がある.非癌病変との鑑別には,粘膜下腫瘍様隆起や腫瘍周囲の白色領域の有無,NBI併用拡大観察が有用であるが,詳細な観察が困難な場合には生検組織診断が必要である.

—胃型形質を示す胃上皮性腫瘍の内視鏡的特徴—胃底腺型腺癌

著者: 櫻井裕久 ,   上堂文也 ,   北村昌紀 ,   北川大貴 ,   大久保佑樹 ,   川上裕史 ,   谷泰弘 ,   七條智聖 ,   金坂卓 ,   竹内洋司 ,   東野晃治 ,   道田知樹 ,   石原立

ページ範囲:P.1520 - P.1526

要旨●胃底腺型腺癌11例17病変の内視鏡所見を検討した.白色光観察の内視鏡的特徴であるSMT様の腫瘍辺縁は53%,褪色調は94%,拡張した樹枝状血管は65%,背景粘膜に萎縮なしは100%で認め,既報と同様であった.NBI拡大観察の内視鏡的特徴である明瞭なDLなしは80%,窩間部の開大は100%,SECの蛇行・拡張(irregularityに乏しい微小血管)は73%で認め,既報と同様であった.U領域で隆起型が,M領域では陥凹型が多く,局在と肉眼型に関連がある可能性が示唆された.同一例で多発病変は類似した所見を呈し,主病変と同様の所見や小さな褪色陥凹を注意深く探すことで,多発病変の指摘が可能となると考えられた.

—胃型形質を示す胃上皮性腫瘍の内視鏡的特徴—胃固有粘膜型腫瘍(胃底腺粘膜型,胃底腺・幽門腺粘膜混合型)

著者: 今村健太郎 ,   八尾建史 ,   田邉寛 ,   高橋晴彦 ,   金光高雄

ページ範囲:P.1527 - P.1541

要旨●方法:当院で内視鏡的または外科的切除された連続した早期胃癌全症例のうち,病理組織学的に胃底腺型腺癌または胃固有粘膜型腺癌(胃底腺粘膜型,胃幽門腺粘膜型,胃底腺・幽門腺粘膜混合型,噴門腺粘膜型)と診断された病変を抽出し,胃固有粘膜型腺癌の臨床病理学的所見と内視鏡所見の特徴を,胃底腺型腺癌と比較して検討した.結果:胃底腺型腺癌16病変,胃底腺粘膜型腺癌13病変と胃底腺・幽門腺粘膜混合型腺癌2病変が解析対象となった.平均腫瘍径は胃底腺・幽門腺粘膜混合型腺癌,胃底腺粘膜型腺癌,胃底腺型腺癌の順で大きく,14.5mm,8.0mm,5.0mmであった.粘膜下層に浸潤している癌はすべて粘膜下層浅層(SM1)浸潤であり,リンパ管・静脈侵襲は陰性であった.胃底腺粘膜型腺癌の通常内視鏡所見が胃底腺型腺癌と異なる点は,インジゴカルミン色素撒布像での領域性を有する顆粒状変化であった.また,NBI併用拡大所見では,92%(12/13)の病変がVS classification systemで癌の診断基準を満たしていたが,胃底腺型腺癌はすべての病変で癌の診断基準を満たしていなかった(0%,0/16).胃底腺・幽門腺粘膜混合型腺癌の通常内視鏡所見が胃底腺型腺癌と異なる点は,拡張した樹枝状血管を認めない,上皮下腫瘤様所見を認めない,および,インジゴカルミン色素撒布像での顆粒状変化を認める,であった.また,胃底腺粘膜型腺癌と異なる点は,上皮下腫瘤様所見を認めない,拡張した樹枝状血管を認めない,であった.NBI併用拡大所見では,50%(2/4)の病変がVS classification systemで癌の診断基準を満たしていた.結語:①胃底腺粘膜型腺癌は,NBI併用拡大観察により癌と診断できる可能性が高いことが示唆された.②胃底腺・幽門腺粘膜混合型腺癌の通常内視鏡像は,胃底腺型腺癌,胃底腺粘膜型腺癌とは明らかに異なり,NBI併用拡大観察では癌の診断が困難であった.

—胃型形質を示す胃上皮性腫瘍の内視鏡的特徴—胃型腺腫(幽門腺腺腫)

著者: 上尾哲也 ,   安部真琴 ,   本田俊一郎 ,   下森雄太 ,   山中昴紀 ,   照山直樹 ,   久保山雄介 ,   福田昌英 ,   髙橋晴彦 ,   村上和成

ページ範囲:P.1543 - P.1552

要旨●胃癌取扱い規約において,胃型粘液形質を示す胃型腺腫とは幽門腺腺腫(pyloric gland adenoma)を指す.通常,本邦で報告される幽門腺腺腫はH. pyloriによる慢性胃炎を伴う背景粘膜に生じ,H. pylori感染との関連性が高い腫瘍である.しかし近年,H. pylori未感染で胃炎のない正常粘膜にも生じうる腫瘍であることがわかり,H. pylori感染率が低下している本邦において,注目すべき胃腫瘍と思われる.幽門腺由来ではなく胃底腺粘膜に発生し,特に頸部粘液細胞への分化を主体とする腫瘍であるが,同様に胃底腺型細胞へ分化を示す胃底腺粘膜型胃癌などの胃型形質の腫瘍との鑑別が問題となる.本稿では幽門腺腺腫の疾患概要を述べ,症例を提示しながら,その内視鏡所見の読み方・特徴について解説する.

—胃型形質を示す胃上皮性腫瘍の内視鏡的特徴—胃型腺癌

著者: 波佐谷兼慶 ,   海崎泰治 ,   幸明克典 ,   釜田誠也 ,   北川浩太 ,   平井博和 ,   宇賀治良平 ,   内藤慶英 ,   砂子阪肇 ,   青柳裕之 ,   奥田俊之 ,   宮永太門 ,   二宮致

ページ範囲:P.1553 - P.1562

要旨●胃型の粘液形質を呈する分化型癌で腺窩上皮型腫瘍,胃底腺型腫瘍,胃粘膜型腫瘍,胃型腺腫の特徴を有さない,いわゆる“その他の胃型分化型癌”の臨床病理学的・内視鏡的特徴を検討した.対象となる病変は免疫組織化学的検討結果と組織学的構築像より,①腺窩上皮類似型(表層型),②胃固有粘膜類似型(粘膜型),③腸上皮化生類似型,の3つのカテゴリーに分類可能であった.腺窩上皮類似型では,隆起性病変で表層が乳頭状から顆粒状構造を呈することが多く,固有粘膜類似型は発赤調で病変周囲に同色調の辺縁隆起がみられることが多かった.腸上皮化生類似型は胃腸混合型の占める割合が高く,腸型病変の特徴と類似していた.胃腸混合型は胃型優位であっても形態学的には腸型に分類するのが妥当と思われた.今回の対象となる胃癌は多様性に富む雑多な集団であり,それぞれの分類にも移行性があり内視鏡像は多彩である.胃型の粘液形質を呈する分化型癌は今後さらに臨床的重要度が増すと見込まれ,さらなる多数例での検討で臨床的特徴を明らかにすることが望ましい.

胃型形質を示す非乳頭部十二指腸腺腫・癌の臨床病理学的特徴

著者: 清森亮祐 ,   蔵原晃一 ,   大城由美 ,   平田敬 ,   池上幸治 ,   原田英 ,   原裕一 ,   江頭信二郎 ,   水江龍太郎 ,   南川容子 ,   田中雄志 ,   南一仁 ,   鳥巣剛弘 ,   八尾隆史

ページ範囲:P.1563 - P.1575

要旨●当科で内視鏡的ないし外科的切除により病理組織学的に非乳頭部十二指腸腺腫・癌と確定診断された85例94病変のうち胃型形質と診断された32例35病変を対象とし,その臨床病理学的特徴を遡及的に検討した.32例35病変の平均年齢は72.2歳で,男性25例,女性7例であった.35病変は十二指腸球部25病変(71.4%),下行部乳頭口側6病変(17.1%)と乳頭より近位側の十二指腸に好発し.肉眼型はSMT様隆起が20病変(57.1%),0-I型が14病変(40.0%)と丈の高い病変がほとんどであった.白色化は35病変中6病変(17.1%)に認めるのみであった.術前に生検を施行した26病変のなかで評価可能であった25病変中22病変(88.0%)で病理組織学的に胃型腫瘍の可能性が示唆されていた.切除標本を検討すると病理組織学的に病変表面には胃腺窩上皮への分化を示す細胞から成る領域を35病変中34病変(97.1%)に認めた.35病変は病理組織学的に腺腫26病変,NUMP(neoplasms of uncertain malignant potential)3病変,腺癌6病変に分類された.NBI併用拡大観察では,NUMPと癌は,腺腫と比較してirregular MS pattern, irregular MV patternをそれぞれより高頻度に認めた.腺癌は全例,高分化管状腺癌で,M癌2例,SM癌4例であった.35病変は優位形質から分類すると,MUC5AC優位型(foveolar type)15病変(腺腫13病変,NUMP 2病変),MUC6優位型(pyloric gland type)18病変(腺腫13病変,NUMP 1病変,腺癌4病変)と分類不能型2病変(腺癌2病変)に分類された.MUC6優位型でより高頻度にSMT様の形態を呈していた.

主題症例

PPI長期内服中に癌化した胃底腺ポリープの1例

著者: 福田昌英 ,   九嶋亮治 ,   伴宏充 ,   安藤朗 ,   村上和成

ページ範囲:P.1577 - P.1583

要旨●患者は50歳代,女性.逆流性食道炎に対する治療のためプロトンポンプ阻害薬(PPI)を内服中であった.内服開始1年後に胃ポリープが発生し,次第に増加,増大していった.ポリープ発生から15年後に最大のポリープは10mmを超え,同病変はNBI併用拡大内視鏡観察で腺癌が疑われる所見であったため,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理組織学的には,low-grade dysplasiaとhigh-grade dysplasiaが併存したPPI関連胃底腺ポリープと診断した.dysplasiaが発生してから14年間の経過で浸潤癌にはならなかった.

胃底腺ポリープ関連腫瘍(胃底腺粘膜型腺癌)の1例

著者: 竹内学 ,   加藤卓 ,   高綱将史 ,   土井智裕 ,   夏井大輝 ,   神保遼 ,   永山逸夫 ,   盛田景介 ,   小林雄司 ,   吉川成一 ,   薄田浩幸 ,   味岡洋一

ページ範囲:P.1585 - P.1592

要旨●患者は30歳代,女性.FAPに対する大腸全摘後で5年前に早期胃癌に対しESDを行い,その後も定期的にEGDを施行していた.通常観察にて多発する胃底腺ポリープに比べ発赤調を呈する7mm大の隆起を胃体中部大彎に認め,生検にてGroup 5(tub1)とした.NBI拡大観察では胃底腺ポリープを反映する規則正しい類円形pit領域と境界を有し,口側には密度の高いpit様構造,中央には不整な顆粒・鱗状構造を認め,Endocyotoscopyでは構造の不整と軽度腫大した核の所見を認めた.ESD切除標本の病理組織像では異型腺窩上皮だけでなく,その周囲の胃底腺にも軽度の核異型,構造異型,MUC5AC染色陽性による分化の異常,Ki-67増殖活性高値を認めたことより腫瘍であると考え,胃底腺ポリープ内に発生した胃底腺粘膜型腺癌と診断した.腺窩上皮領域の異型のみでなく,近傍の胃底腺領域にも異型を認めた極めてまれな症例と考えられた.

PPI関連胃底腺ポリープに発生した胃型腺腫の1例

著者: 内田涼太 ,   赤澤陽一 ,   上山浩也 ,   山本桃子 ,   岩野知世 ,   宇都宮尚典 ,   沖翔太朗 ,   阿部大樹 ,   鈴木信之 ,   池田厚 ,   竹田努 ,   上田久美子 ,   浅岡大介 ,   北條麻理子 ,   八尾隆史 ,   永原章仁

ページ範囲:P.1593 - P.1598

要旨●患者はPPI長期内服歴がある70歳代,男性.胃体下部大彎に増大傾向のある12mm大の白色調隆起性病変を認め,水腫様変化を有し,表面構造は微細顆粒状であった.NBI併用拡大観察(ME-NBI)では,微小血管構築像はWOSにより視認できずabsent,表面微細構造はregularと判断したが,弱い不整を認めたことからPPI関連胃底腺ポリープ(FGP-PPI)に発生した低異型度の上皮性腫瘍が考えられ,EMRにて切除した.病理組織学的所見では,胃型形質を呈する低異型度の上皮性腫瘍の増生を認め,非腫瘍部ではFGP-PPIに特徴的な病理組織像を示し,FGP-PPIより発生した胃型腺腫と診断した.FGP-PPIに表面構造の不整やWOSなどの非典型的な所見がみられた場合,腫瘍の合併を考慮しME-NBIを用いた精査や生検を考慮する必要がある.

今月の症例

消化管に限局したALアミロイドーシス

著者: 山崎健路 ,   九嶋亮治

ページ範囲:P.1486 - P.1489

患者
 70歳代,女性.
主訴
 貧血.
現病歴
 近医で貧血を指摘されため,当院へ紹介され受診となった.
既往歴
 60歳代時に腎血管筋脂肪腫の手術施行.
診察所見
 眼瞼結膜に貧血,下肢に軽度の浮腫を認める.
血液検査所見
 ヘモグロビン8.7g/dl,総蛋白6.0g/dl,アルブミン3.6g/dlと低値.血清H. pylori(Helicobacter pylori)抗体3.0U/ml(除菌歴はなし).尿蛋白陰性.

非中毒性巨大結腸症を呈した大腸型Crohn病の1例

著者: 佐野村誠 ,   坂口奈々子 ,   疋田千晶 ,   辻沙也佳 ,   内海麻衣 ,   冨永真央 ,   西川知宏 ,   𥔎山直邦 ,   西谷仁 ,   柿本一城 ,   中村志郎 ,   西川浩樹

ページ範囲:P.1490 - P.1493

患者
 50歳代,女性.
主訴
 血性下痢,腹痛,発熱.
既往歴
 2型糖尿病,高血圧症,脂質異常症.
現病歴
 約3か月前から1日数行の下痢と腹痛が出現し,他院受診にて治療を受けたが,改善しなかった.4日前から1日14〜15行の下痢,腹痛,発熱を認め,血性下痢になったため当院に救急搬送され受診となった.

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目次

ページ範囲:P.1483 - P.1483

欧文目次

ページ範囲:P.1484 - P.1484

バックナンバー・定期購読のご案内

ページ範囲:P.1482 - P.1482

早期胃癌研究会 症例募集

ページ範囲:P.1562 - P.1562

「今月の症例」症例募集

ページ範囲:P.1575 - P.1575

次号予告

ページ範囲:P.1600 - P.1600

編集後記

著者: 八尾建史

ページ範囲:P.1601 - P.1601

 かつて,胃の腺腫・腺癌と言えば,“腸上皮化生から発生し,腸型の形質を呈する”概念が定説であった.しかし,1990年代以降,胃型の形質を呈する腺腫や腺癌が報告され,今世紀には“胃型腺腫・胃型腺癌”という診断名が市民権を得るようになった.胃粘膜の多彩な上皮細胞の分化マーカーが利用可能となり,胃型腫瘍は,その分化傾向に応じて,腺窩上皮型,幽門腺型,胃底腺型,胃底腺粘膜型などに細分化されてきた.拡大内視鏡観察によっても,胃腫瘍の形質診断まで踏み込めるようになってきた.さらに,H. pylori(Helicobacter pylori)の除菌後粘膜や未感染粘膜が増加する今日,胃型腫瘍はますます注目を浴びるようになった.
 一方,十二指腸粘膜は小腸型粘膜に被覆されているので,腸型の腺腫・腺癌が発生するが,異所性胃粘膜,胃腺窩上皮化生とBrunner腺の存在に基づいて,胃粘膜原発のものに類似する胃型腫瘍が少なからず発生する.また,十二指腸ではBrunner腺の存在様式から独特の形態を示す胃型腫瘍が多い.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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