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文献詳細

雑誌文献

胃と腸57巻3号

2022年03月発行

今月の主題 食道上皮内腫瘍の診断と取り扱い

主題

食道上皮内腫瘍の病理学的検討—“食道上皮内腫瘍”とはどういうものか:病理医の立場から

著者: 根本哲生1

所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院臨床病理診断科

ページ範囲:P.231 - P.241

文献概要

要旨●食道における扁平上皮内腫瘍(SIN)は,腫瘍と判定される上皮内病変のうち癌を除いたもの,と「食道癌取扱い規約 第11版」で定義されている.病変を腫瘍と判定する重要な要素は領域性を持つことである.食道においては,領域性のある異型上皮巣の大多数は癌と診断される傾向にある.病理医が癌の診断をためらう要素として,弱い細胞異型,表層への分化傾向が挙げられる.また,生検材料など情報量が少ない場合,便宜的にSINと診断されることがある.病理学的低異型度腫瘍としてのSINが臨床病態を反映するか否かを検証する必要がある.もし長期間,水平・垂直方向に進展しない一群の腫瘍が存在するならば,臨床的な取り扱いが通常の癌と異なるという意味で,SINという概念を確立する意義がある.そのような病変は,多発不染帯の一部であったり,小病変であったりすることが多く,病理学的評価を含めて経時的な観察を行うことには困難が予想されるが,臨床と病理が協力した研究が必要である.

参考文献

1)日本食道学会(編).臨床・病理 食道癌取扱い規約,第11版.金原出版,2015
2)島田英雄,西隆之,佐藤慎吉,他.多発食道癌“まだら(多発ヨード不染域を有する)食道”について.田久保海誉,大橋健一(編).腫瘍病理鑑別診断アトラス—食道癌.文光堂,pp 67-74, 2012
3)渡辺英伸,多田哲也,岩渕三哉,他.食道“dysplasia”の存在意義はあるのか.胃と腸 26:133-140, 1991
4)大倉康男,中村恭一,細井董三,他.生検による経過観察からみた食道の早期癌と“dysplasia”—癌組織発生と生検組織診断基準について.胃と腸 26:141-152, 1991
5)Kobayashi M, Kawachi H, Takizawa T, et al. p53 Mutation analysis of low-grade dysplasia and high-grade dysplasia/carcinoma in situ of the esophagus using laser capture microdissection. Oncology 71:237-245, 2006
6)河内洋,小林真季,滝澤登一郎,他.食道上皮内腫瘍性病変の組織像と遺伝子異常.胃と腸 42:173-186, 2007
7)根本哲生.良悪性の鑑別が問題となる食道病変の病理学的特徴.消化器内科 3:64-71, 2021
8)藤井誠志.扁平上皮癌.大橋健一,河内洋(編).腫瘍病理鑑別診断アトラス—食道癌,第2版.文光堂,pp 46-62, 2021
9)河内洋,中野薫.扁平上皮内腫瘍.大橋健一,河内洋(編).腫瘍病理鑑別診断アトラス—食道癌,第2版.文光堂,pp 38-45, 2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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