icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸57巻5号

2022年05月発行

文献概要

増刊号 図説「胃と腸」画像診断用語集2022 疾患 胃

ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍

著者: 柴垣広太郎1 三代剛2

所属機関: 1島根大学医学部附属病院光学医療診療部 2雲南市立病院内科

ページ範囲:P.620 - P.620

文献購入ページに移動
 腺窩上皮型胃腫瘍は,腺窩上皮細胞への分化を示す胃型形質の胃上皮性腫瘍である.腫瘍が腺窩上皮細胞に類似した腫瘍細胞で構成され,かつ/またはMUC5AC主体の胃型形質を発現する場合,“腺窩上皮型”と診断される.上方発育主体の腫瘍であり,H. pylori(Helicobacter pylori)既感染胃では粗大な発赤調隆起を,未感染胃では主にラズベリー様の小隆起を呈することが多い1)
 ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍は,H. pylori未感染胃の胃体部大彎と胃穹窿部に好発し,症例の約20%が多発性である(2〜4個).平均3mmほどの発赤した小隆起で,色調に注目して観察すれば発見は難しくない(Fig.1).NBI併用拡大観察では乳頭状または脳回様構造を呈し,広い窩間部に拡張した血管が視認される場合が多い.病理組織学的には乳頭状に増生する腫瘍腺管を認め,腫瘍細胞はmucin capと概ね基底層に並ぶ核を持ち,low-grade dysplasia相当の病変が多く,high-gradeでも間質浸潤を伴うことはほぼない.免疫組織化学染色では,MUC5ACが強陽性,MUC6はほぼ陰性,MUC2/CD10は陰性で,胃型(腺窩上皮型)形質を示す2).胃型腫瘍の潜在的な悪性度から,本邦では癌と診断されることも多いが,WHO分類(2019)ではfoveolar-type adenomaである.

参考文献

1)Shibagaki K, Mishiro T, Fukuyama C, et al. Sporadic foveolar-type gastric adenoma with a raspberry-like appearance in Helicobacter pylori-naïve patients. Virchows Arch 479:687-695, 2021
2)柴垣広太郎,三代剛,石村典久,他.H. pylori未感染胃粘膜に生じる胃癌の内視鏡診断—H. pylori未感染胃粘膜に生じるラズベリー様腺窩上皮型胃癌.消内視鏡 32:97-105, 2020
3)福山知香,柴垣広太郎,三上博信,他.Helicobacter pylori未感染者の胃底腺粘膜に多発した低異型度胃型腺癌(腺窩上皮型)と腺窩上皮型過形成性ポリープの1例.胃と腸 54:265-272, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?