文献詳細
増刊号 図説「胃と腸」画像診断用語集2022
疾患 下部消化管
文献概要
直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome of the rectum ; MPS)は,繰り返す直腸の粘膜脱により形成される疾患の総称である.排便時の出血,残便感,肛門痛などの症状を示し,背景に排便習慣異常がある.長時間にわたる排便時の過度ないきみにより,直腸粘膜や直腸壁の脱出が起き,慢性的な機械的刺激や虚血性変化,過形成性変化により,主に直腸前壁に隆起や潰瘍を形成する.病理組織学的には,線維筋症(fibromuscular obliteration)と呼ばれる粘膜固有層の線維筋組織の増生が特徴的である(Fig.1).
名称の定義や呼称には変遷と混乱があり,非腫瘍性慢性直腸潰瘍,孤立性直腸潰瘍,孤立性直腸潰瘍症候群(solitary rectal ulcer syndrome ; SRUS)などと報告されていたが,1983年にdu Boulayら1)はSRUSと直腸粘膜脱は本質的に同じであるとし,直腸粘膜脱症候群と呼称することを提唱した.
名称の定義や呼称には変遷と混乱があり,非腫瘍性慢性直腸潰瘍,孤立性直腸潰瘍,孤立性直腸潰瘍症候群(solitary rectal ulcer syndrome ; SRUS)などと報告されていたが,1983年にdu Boulayら1)はSRUSと直腸粘膜脱は本質的に同じであるとし,直腸粘膜脱症候群と呼称することを提唱した.
参考文献
1)du Boulay CE, Fairbrother J, Isaacson PG. Mucosal prolapse syndrome—a unifying concept for solitary ulcer syndrome and related disorders. J Clin Pathol 36:1264-1268, 1983
2)太田玉紀,味岡洋一,渡辺英伸.直腸の粘膜脱症候群—病理の立場から.胃と腸 25:1301-1311, 1990
3)大川清孝,青木哲哉,上田渉,他.直腸粘膜脱症候群診断のこつ.Gastroenterol Endosc 56:494-503, 2014
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