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文献詳細

雑誌文献

胃と腸57巻5号

2022年05月発行

文献概要

増刊号 図説「胃と腸」画像診断用語集2022 疾患 下部消化管

サイトメガロウイルス腸炎

著者: 清水誠治1 富岡秀夫1

所属機関: 1大阪鉄道病院消化器内科

ページ範囲:P.660 - P.660

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 ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus ; HCMV,以下CMV)の宿主はヒトのみである.CMV感染(CMV infection)とCMV感染症(CMV disease)は区別され,前者は血液などからCMVが同定される場合,後者は臓器障害など臨床症状を伴う場合を指す.感染経路には胎盤,産道,母乳による垂直感染と,体液,臓器による水平感染がある.ほとんどが不顕性感染で,生涯にわたり潜伏感染する.本邦での感染率は90%以上であったが,経年的に低下している.CMV感染症の多くが内因性感染であり,免疫能低下に伴うウイルスの再活性化により発症する(回帰感染).基礎疾患にはAIDS(acquired immuno deficiency syndrome),副腎皮質ホルモン,免疫抑制薬,抗腫瘍薬が使用される疾患(造血幹細胞移植などの臓器移植,自己免疫疾患,悪性腫瘍など)が多い.他に慢性腎不全,重症外傷,高齢者などの相対的な免疫不全患者や健常者での発症もみられる.病変はCMVが血管内皮細胞に感染し,巨細胞になることによる虚血性変化と考えられている.臓器移植後には移植片対宿主病(graft-versus-host disease ; GVHD)が高率に合併する.
 症状は発熱などの全身症状,悪心,嘔吐,腹痛,下痢,消化管出血,消化管穿孔などである.確定診断には,手術・剖検例以外では病変の確認に内視鏡検査が,CMVの証明に生検病理組織学的診断が必要である.生検病理組織像でowl eye様の核内封入体や細胞質内封入体が同時にみられればHE染色像のみで診断できるが,検出率は低い.ウイルスは血管内皮細胞や線維芽細胞に感染し,潰瘍底肉芽組織からの生検で検出率が比較的高いが,抗CMV抗体免疫染色で診断能が向上する.生検診断が困難な場合には,CMV抗原血症検査やPCR(polymerase chain reaction)法を含め総合的に判断する.

参考文献

1)佐野弘治,大川清孝,中内脩介,他.小腸の非腫瘍性疾患—サイトメガロウイルス(CMV)小腸炎の臨床像と内視鏡像.胃と腸 54:505-514, 2019
2)野木真将,宮坂英,関岡敏夫,他.サイトメガロウイルス感染が証明された急性出血性直腸潰瘍の2例.日本大腸肛門病会誌 64:29-34, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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