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増刊号 図説「胃と腸」画像診断用語集2022 病理
陰窩膿瘍
著者: 根本哲生1
所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院臨床病理診断科
ページ範囲:P.732 - P.732
文献購入ページに移動 陰窩(crypt)とは,腸粘膜において,上皮が下方に落ち窪んだ管状(細長い袋状)の構造で,病理組織標本では腺管として認識される.陰窩炎(cryptitis)とは,陰窩を構成する上皮細胞に好中球浸潤がみられる状態をいう(Fig.1).陰窩炎が高度となり,陰窩内腔に好中球が充満した状態を指して陰窩膿瘍と呼んでいる(Fig.2,3).膿瘍とは本来,上皮バリアの内側,すなわち間質に起こる現象で,細菌感染などに対して好中球が浸潤・集簇し,好中球が産生する酵素により組織が融解している状態を指すので,陰窩内腔の好中球のみでは厳密な意味での膿瘍ではないが,実際の病理報告書では間質破壊が確認できないものも含めて陰窩膿瘍としていることが多い.
参考文献
1)田中正則.大腸の炎症性疾患—生検診断のアルゴリズム.病理と臨 26:784-794, 2008
2)八尾隆史.I-II原因不明であるが一つの独立した疾患として確立されている腸炎—B.潰瘍性大腸炎.小田義直,坂本亨宇,松野吉宏,他(編).外科病理学,第5版.文光堂,pp 544-547, 2020
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