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今月の主題 原発性小腸癌—見えてきたその全貌 序説
原発性小腸癌—見えてきたその全貌
著者: 田中信治1
所属機関: 1広島大学大学院医系科学研究科内視鏡医学
ページ範囲:P.763 - P.764
文献購入ページに移動 小腸原発の上皮性悪性腫瘍は消化管腫瘍の2.2〜3.2%とまれな疾患であり1)2),組織型別頻度ではほとんどの報告で,高〜中分化型腺癌が最多で,粘液癌,印環細胞癌はまれである.高橋ら3)によると,全消化管悪性腫瘍に占める割合は,部位別にみると,空腸癌は0.05%,回腸癌は0.01%で,回腸癌よりも空腸癌の頻度が高いと報告している.1970〜1979年の本邦報告例の集計によると,好発部位は,空腸癌では77.8%がTreitz靱帯から60cm以内,回腸癌では66.7%が回盲弁から40cm以内である4).一方,八尾ら5)の1995〜1999年の本邦報告例の集計によると,小腸悪性腫瘍のうち腺癌の頻度は32.6%である.しかし,本邦には小腸癌に関する正確な統計は現在存在しない.
近年の内視鏡医学の進歩によってカプセル内視鏡(2003年〜)とバルーン内視鏡(1998年〜)が普及し,小腸疾患の診断能は飛躍的に向上し,多くの病態解明が進みつつある.そして,上皮性腫瘍の診断の進め方も確立している6).一方,原発性小腸癌に関しては,希少であることに加え,狭窄症状や転移・播種を契機に進行した状態で診断される例が多く,その発生・発育進展の解明と早期発見への取り組みが急務とされている.
近年の内視鏡医学の進歩によってカプセル内視鏡(2003年〜)とバルーン内視鏡(1998年〜)が普及し,小腸疾患の診断能は飛躍的に向上し,多くの病態解明が進みつつある.そして,上皮性腫瘍の診断の進め方も確立している6).一方,原発性小腸癌に関しては,希少であることに加え,狭窄症状や転移・播種を契機に進行した状態で診断される例が多く,その発生・発育進展の解明と早期発見への取り組みが急務とされている.
参考文献
1)日本病理学会(編).日本病理剖検輯報41輯(平成10年度剖検例収録).日本病理剖検輯報刊行会,pp 1104-1108, 2000
2)Martin RG. Malignant tumours of the small intestine. Surg Clin North Am 66:779-785, 1986
3)高橋孝,池秀之,池田孝明.本邦臨床統計集—腸癌.日臨 41(臨増):1369-1382, 1983
4)八尾恒良,日吉雄一,田中啓二,他.最近10年間(1970〜1979)の本邦報告例の集計からみた空・回腸腫瘍—悪性腫瘍.胃と腸 16:935-941, 1981
5)八尾恒良,八尾建史,真武弘明,他.小腸腫瘍—最近5年間(1995〜1999)の本邦報告例の集計.胃と腸 36:871-881, 2001
6)岡志郎,田中信治,壷井章克,他.小腸腫瘍性病変の内視鏡診断—上皮性腫瘍の診断の進め方.胃と腸 55:630-636, 2020
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