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文献詳細

雑誌文献

胃と腸58巻12号

2023年12月発行

早期胃癌研究会症例

質的診断・深達度診断に苦慮した内反性増殖を呈した早期胃癌の1例

著者: 名和田義高1 市原真2 濱本英剛1 赤平純一3 平澤大4 松田知己1 長南明道1

所属機関: 1一般財団法人厚生会仙台厚生病院消化器内科 2JA北海道厚生連札幌厚生病院病理診断科 3一般財団法人厚生会仙台厚生病院病理診断・臨床検査科 4松園第二病院消化器内科

ページ範囲:P.1679 - P.1687

文献概要

要旨●患者は70歳代,男性.X年に噴門部後壁に粘液が強固に付着し,開口部様の所見を伴う10mm大のわずかに隆起した病変を認めた.生検はGroup 1の診断で,以降,毎年EGDで観察されていた.X+6年にH. pylori除菌が施行された後,付着粘液の減少が観察された.病変の形態変化は乏しかったが,X+9年に再生検が施行され,高分化管状腺癌の診断となった.EUSでは第3層に境界明瞭な低エコー腫瘤を認めた.診断的治療目的にESDを施行した.病理組織学的診断は内反性増殖を示した腺癌で,わずかな粘膜筋板の断裂を認め,深達度はSM1であった.開口部様の所見を伴う癌は,内反性増殖性病変の可能性があり,深達度診断の際には注意が必要と考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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