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文献詳細

雑誌文献

胃と腸58巻2号

2023年02月発行

文献概要

今月の主題 鋸歯状病変関連の早期大腸癌 主題研究

SSLの癌への発育進展

著者: 加藤文一朗1 松下弘雄1 吉川健二郎1 田中義人1 萬春花1 田口愛弓1 橋本大志1 山崎晃汰1 髙木亮1 山田宗玄1 東海林琢男2 榎本克彦2 菅井有3 山野泰穂4 鈴木拓5

所属機関: 1秋田赤十字病院消化器病センター 2秋田赤十字病院病理診断科 3岩手医科大学医学部病理診断学講座 4札幌医科大学医学部消化器内科学講座 5札幌医科大学医学部分子生物学講座

ページ範囲:P.189 - P.198

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要旨●大腸鋸歯状病変のうちSSA/PはWHO分類(2010年)でSSA/P with cytological dysplasiaとして悪性化ポテンシャルを有することが明記された.その後,WHO分類(2019年)ではSSA/Pの名称はなくなり,代わりにSSLという名称が加わった.WHO分類(2019年)では名称だけではなく,病理組織学的診断基準も旧分類と若干異なり,臨床的な取り扱いはもちろん病理組織学的な取り扱いについても混沌としている.今回,当センターで経過観察しえたSSA/P関連病変を提示し,SSA/Pの癌への発育進展について考察した.経過観察中に変化を来さない病変が存在する一方で,段階的な変化を認め癌の診断となった病変が存在した.変化を来した症例ではdysplasiaの特徴とされる発赤や二段隆起に先駆けてpit patternの変化を認識できる可能性があり,SSA/Pの発育進展を内視鏡で捉えるためには,拡大内視鏡による詳細かつ丁寧な観察を行う必要性があると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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