今月の主題 食道ESD瘢痕近傍病変の診断と治療
主題
食道ESD瘢痕近傍病変の臨床病理学的検討
著者:
高橋亜紀子1
小山恒男1
塩澤哲2
下田忠和3
太田浩良4
荒川愛子2
山田崇裕15
加古里子1
所属機関:
1佐久医療センター内視鏡内科
2佐久医療センター臨床病理部
3静岡がんセンター病理診断科
4信州大学医学部保健学科生体情報検査学
5佐久医療センター消化器内科
ページ範囲:P.286 - P.299
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要旨●2010年3月〜2020年4月の期間に当科にてR0切除の食道ESDを施行し,経過観察中ESD瘢痕内に白色光観察(WLI)で発赤,またはNBI観察でBA,あるいはヨード不染を呈した11例を対象とし,内視鏡的・病理組織学的特徴をretrospectiveに検討した.対象の内訳は,初回ESDでは非全周切除後6例,全周切除後5例,診断方法ではESD 5例,生検6例であった.非全周切除後6例中,5例(83%)がSCC,1例(17%)が非腫瘍であった.内視鏡所見では,全例でWLIにて発赤,NBI観察にてBAを呈した.JES Type B1を呈した1例はSCCであり,JES Type Aであった5例中,4例(80%)はSCC,他1例(20%)は非腫瘍であったがヨードでは不整形であった.一方,全周切除後5例中,1例(20%)がSCC,4例(80%)が非腫瘍であった.内視鏡所見では,5例中,1例(20%)のみがWLIで発赤,NBI観察でBAを呈しており,JES Type Aを認めたが非腫瘍であった.他4例(80%)はヨードで初めて発見され,1例(25%)のみSCCで,他3例(75%)は非腫瘍であり,2例(67%)はヨードで不整形,1例(33%)は整形であった.したがって,非全周切除例でNBI-MEにてJES Type Bを認めた場合は生検を省略し直接ESDを行う方針は許容される.JES Type Aを認めた場合はSCCの可能性が80%と高いが非腫瘍も混在するため,SCCの確信度が高ければ生検を省略しESDも許容されるが,SCCの確信度が低ければ生検を行う.全周切除例では大部分がヨードで初めて発見され,ほとんどが非腫瘍であったため,ヨードで整形の場合は経過観察も許容されるが,不整形の場合は生検を行い,p53,Ki-67染色も含め評価することが望まれる.