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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸58巻4号

2023年04月発行

雑誌目次

増大号 「胃と腸」式 読影問題集2023 基本と応用—考える画像診断が身につく

序説

著者: 松本主之

ページ範囲:P.371 - P.371

 「胃と腸」の読者の皆さまは,早期胃癌研究会や臨床消化器病研究会に代表される消化管疾患の症例検討会に参加された経験をお持ちであろう.症例検討は病歴,臨床検査成績を参照しながらX線造影所見・内視鏡所見を分析する能力,鑑別診断の想起,最終診断に至る思考過程を鍛える最良の機会である.また,症例検討により得られた知識は,直接患者に福音をもたらすことになる.さらに,良問であれば,各人に読影後の爽快感と知的満足感を提供することができる.そこで今回の「胃と腸」増大号は,症例検討の醍醐味を伝えることを目的として企画された.まずはご自身で設問に対する解答を準備し,理論武装して解説を読み進めていただければ幸いである.
 消化管疾患は腫瘍状病変や炎症性病変など多岐にわたり,部位別に好発する疾患も大きく異なっている.したがって,症例検討に際しては部位別の疾患構成の違いを基礎知識として頭に入れておくことが重要である.定型的には,従来はX線造影検査,次いで内視鏡検査を分析し,両検査法を対比しながら想起,鑑別,最終診断と思考を進めていた.読者の皆さまには,このような過程が基本であることをまずは学んでいただきたい.本号で集積された症例は多岐にわたり,症例ごとに執筆者の強い思い入れも込められてはいるものの,疾病によりX線造影検査,通常内視鏡検査の位置付けが異なることが示されている.第一にこのことを学んでいただければと思っている.

咽頭・食道 9 Cases

Case 1

著者: 竹内学 ,   加藤卓 ,   味岡洋一

ページ範囲:P.372 - P.375

臨床情報 
60歳代後半,女性.主訴は特になし.既往歴は60歳代後半時に食道癌にて術前化学療法後に胸腔鏡下食道切除術施行.嗜好歴として飲酒ビール500ml/day(約50年),喫煙60本/day(約45年,現在禁煙).20XX年に頭頸部・残存頸部食道癌サーベイランス目的のため,当院での上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて下咽頭に異常指摘された.

Case 2

著者: 小山恒男 ,   高橋亜紀子 ,   塩澤哲 ,   荒川愛子

ページ範囲:P.376 - P.379

臨床情報 
50歳代,男性.人間ドックの上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて食道病変が指摘されたため,紹介受診となった.自覚症状なし.嗜好歴:飲酒3合/day,flusher.喫煙20本/day×27年,5年前より禁煙中.

Case 3

著者: 平澤大 ,   赤平純一 ,   藤島史喜

ページ範囲:P.380 - P.383

臨床情報 
60歳代後半,男性.健康診断の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で中部食道に病変を指摘されたため当科へ紹介され受診した.

Case 4

著者: 小野陽一郎 ,   八尾建史 ,   二村聡

ページ範囲:P.384 - P.387

臨床情報 
70歳代,男性.緩徐進行1型糖尿病,高血圧症,脂質異常症に対して近医に通院中であった(薬物療法:インスリン製剤,ミグリトール,オルメサルタン,アムロジピン,ロスバスタチン).スクリーニング目的で受けた近医の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で,食道胃接合部に隆起性病変を認め,精査加療目的で当科へ紹介され受診となった.前医の検査から約3週間後に,当院にて初回EGDを施行した.その約5日後にX線造影検査による精査を行った.

Case 5

著者: 小澤俊文

ページ範囲:P.388 - P.391

臨床情報 
70歳代,女性.主訴:食事時のつかえ感.既往歴:特記すべきものなし.現病歴:3か月来の主訴のため近医より内視鏡検査目的に201X年9月,当院に紹介され受診となった.検査・臨床経過:201X年9月に上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)・ブジー,食道X線造影検査(約3週間後),201X年10月にEGD/再拡張術,薬物療法,201X年12月にEGDを施行した.初診後の内視鏡検査では汎用内視鏡が通過せず(Fig.1a),経鼻用の細径内視鏡に変更して再挿入を行った(Fig.1b).後日ブジーを行い,約1か月後に汎用内視鏡を用いて挿入・観察を行ったのがFig.1c,dである.頸部食道付近〜胸部上部食道に大小の陥凹が多数観察された.また,胸部中部食道より肛門側には,厚い白色調付着物が認められ,水洗しても脱落しなかった.ブジー後に撮像した食道X線造影像(第1斜位)をFig.2に示す.治療後に施行した内視鏡像(初診時より約3か月後)をFig.3に示す.

Case 6

著者: 依光展和 ,   小田丈二 ,   山村彰彦

ページ範囲:P.392 - P.395

臨床情報 
40歳代,女性.主訴:上腹部不快感.既往歴:虫垂炎手術(19歳時).内服薬:ルナベル®(子宮内膜症)のみ.現病歴:胃X線検診にて異常を指摘されたため,精査目的にて当センターへ受診となった.

Case 7

著者: 前田有紀 ,   小野裕之 ,   下田忠和

ページ範囲:P.396 - P.399

臨床情報 
80歳代,男性.主訴:なし.高血圧,高脂血症のため近医通院中であった(常用薬:アムロジピン,ロスバスタチン).嗜好歴:飲酒はアルコール60g/day×約60年,喫煙は15本/day×約60年.X年7月に,近医で検診目的に上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行し,食道に隆起性病変を認めた.隆起部から採取した生検の病理組織学的診断はsquamous epitheliumであり,腫瘍性変化は認めなかった.精査目的に当科を受診した.X年8月,EGDおよび超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS)を施行し,ボーリング生検を行った.X年9月に,内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)を施行した.

Case 8

著者: 北村陽子 ,   岸埜高明 ,   島田啓司

ページ範囲:P.400 - P.403

臨床情報 
60歳代,女性.数日前からの黒色便を主訴に,当科へ紹介され受診となった.なお,非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs ; NSAIDs)や抗血栓薬の服用はなく,Helicobacter pylori陰性である.上部消化管出血を疑い,上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を行った.

Case 9

著者: 丸山保彦 ,   寺井智宏 ,   安田和世

ページ範囲:P.404 - P.407

臨床情報 
30歳代,男性.主訴:食道,喉のつまり感.既往歴:小児喘息.20XX年7月に,近医の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて食道に異常を指摘された.P-CAB(potassium-competitive acid blocker)20mg内服でも症状改善せず,20XX+2年5月に当科へ紹介され受診となり検査を行った.

胃 14 Cases

Case 1

著者: 小田丈二 ,   入口陽介 ,   山村彰彦

ページ範囲:P.408 - P.411

臨床情報 
70歳代,男性.20XX年,特に自覚症状はなく,胃X線集団検診を受診したところ異常を指摘されたため,精査目的に当センターを受診した.Helicobacter pylori検査歴なし.

Case 2

著者: 宮岡正喜 ,   八尾建史 ,   二村聡

ページ範囲:P.412 - P.415

臨床情報 
60歳代,男性.主訴:心窩部痛.既往歴:高血圧症.内服歴:ラベプラゾール,レバミピド,アムロジピン.職業:農業.心窩部痛を主訴に前医を受診し,上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行され,胃角部大彎に潰瘍性病変を認めた.同部からの生検にて異型上皮が検出されたため当科へ紹介され受診となった.当科で胃X線造影検査,EGDを施行した.入院時検査所見:身長170cm,体重60kg.表在リンパ節腫脹なし.腹部は平坦・軟で圧痛なく,腫瘤を触知せず.入院時検査成績:抗Helicobacter pylori抗体陽性.

Case 3

著者: 金坂卓

ページ範囲:P.416 - P.419

臨床情報 
60歳代,男性.主訴はなし.9年前に食道癌に対して化学放射線療法を,1年前に食道癌(異時性多発病変)に対して内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)を受けた.治療後のサーベイランス目的の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で胃体中部小彎に異常を指摘された(Fig.1,2).Helicobacter pylori除菌歴はなし.

Case 4

著者: 宮岡正喜 ,   八尾建史 ,   二村聡

ページ範囲:P.420 - P.423

臨床情報 
60歳代,男性.主訴:なし.既往歴:20歳時に虫垂切除.内服歴:ラベプラゾール,ポリトーゼ(販売中止),テプレノン.職業:整体師.検診目的に上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行され,前庭部大彎に陥凹性病変を指摘されたため当科へ紹介され受診となった.入院時検査所見:身長160cm,体重61kg.表在リンパ節腫脹なし.腹部は平坦・軟で圧痛なく,腫瘤を触知せず.入院時検査成績:Helicobacter pylori胃粘膜培養陽性.

Case 5

著者: 今村健太郎 ,   八尾建史 ,   田邉寛

ページ範囲:P.424 - P.427

臨床情報 
患者:40歳代,女性.主訴:なし.既往歴:特記事項なし.内服歴:なし.現病歴:検診の胃X線造影検査で異常を指摘され,精査目的に当院へ紹介され受診となった.入院時身体所見:身長154cm,体重45kg.表在リンパ節腫脹なし.腹部は,平坦・軟で圧痛なく,腫瘤を触知せず.入院時検査所見:血清抗H. pylori(Helicobacter pylori)抗体は3U/mlで陰性と判定した.

Case 6

著者: 上山浩也 ,   八尾隆史 ,   永原章仁

ページ範囲:P.428 - P.431

臨床情報 
70歳代,男性.検診の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて胃体上部に病変を指摘され,精査加療目的に当院へ紹介され受診となった.当院での精査内視鏡像(Fig.1:背景粘膜,Fig.2:病変)を提示する.

Case 7

著者: 今村健太郎 ,   八尾建史 ,   二村聡

ページ範囲:P.432 - P.436

臨床情報 
患者:60歳代,女性.主訴:食思不振.既往歴:高血圧症,高脂血庄.内服歴:アムロジピン,ロスバスタチン.現病歴:食思不振を主訴に前医を受診し,上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行された.胃の2か所に褪色調の粘膜領域を認め,同病変の精査・加療目的に当科へ紹介され受診となった.当科でEGDを施行した.入院時身体所見:身長153cm,体重55kg.表在リンパ節腫脹なし.腹部は,平坦・軟で圧痛なく,腫瘤を触知せず.入院時検査所見:血清抗H. pylori(Helicobacter pylori)抗体は52U/ml,H. pylori培養検査陽性.

Case 8

著者: 木澤温子 ,   上堂文也 ,   北村昌紀

ページ範囲:P.437 - P.439

臨床情報 
70歳代,女性.主訴:心窩部痛.既往歴:高血圧症,糖尿病,甲状腺腫瘍,右橈骨遠位端骨折.内服歴:プラバスタチン,アムロジピン,ゾルピデム,センノシド,エチゾラム,ザルトプロフェン,レバミピド,ボノプラザン,トラマドール,プロクロルペラジン,エルデカルシトール,バゼドキシフェン,メトホルミン.現病歴:空腹時に心窩部痛を生じるようになり,近医にて上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行された.胃内に潰瘍性病変を認め,精査加療目的に当科へ紹介され受診となった.H. pylori(Helicobacter pylori)は未除菌.

Case 9

著者: 外山雄三 ,   長浜隆司

ページ範囲:P.440 - P.443

臨床情報 
80歳代,女性.主訴:なし.既往歴:高血圧,陳旧性心筋梗塞.現病歴:数年前に胃ポリープを指摘された.増大傾向にて当院へ紹介され受診となった.

Case 10

著者: 鈴木隆太 ,   濱本英剛 ,   長南明道

ページ範囲:P.444 - P.447

臨床情報 
40歳代,男性.主訴:なし.検診にて異常を指摘.既往歴:特記所見なし.服薬歴:なし.201X年に,検診で施行した胃X線造影検査にて噴門部後壁に透亮像を指摘された(Fig.1).精査加療目的で1か月後に当科へ紹介され受診となり,さらに1か月後に上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を行った(Fig.2).その後のフォローアップ画像(201X+1年時と201X+2年時)をFig.3,4に示す.

Case 11

著者: 吉村大輔 ,   水谷孝弘 ,   落合利彰

ページ範囲:P.448 - P.451

臨床情報 
50歳代,女性.心窩部痛を契機に前医で上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)が施行され胃前庭部に異常を認めたため,当院へ紹介され受診となった.常用薬は降圧薬のみ.H. pylori(Helicobacter pylori)除菌後5年を経過している.まず,精査EGD,その2週間後に上部消化管X線造影検査を施行した.

Case 12

著者: 岸野真衣子 ,   山本智子 ,   野中康一

ページ範囲:P.452 - P.455

臨床情報 
80歳代,男性.対策型胃がん内視鏡検診にて,胃体中部小彎に病変を指摘され,病変中央から生検を施行したが確定診断が得られなかったため,精査目的に当科へ紹介され受診となった.以前,他院での尿素呼気試験(urea breath test ; UBT)によりH. pylori(Helicobacter pylori)陽性と診断され,一次除菌療法を施行したが,効果判定のUBTにて除菌失敗と診断された.二次除菌は未施行である.上部消化管内視鏡検査所見を示す(Fig.1,2).

Case 13

著者: 水江龍太郎 ,   蔵原晃一 ,   大城由美

ページ範囲:P.456 - P.459

臨床情報 
60歳代,男性.主訴:なし.既往歴:鼠径ヘルニア(40歳代,手術).家族歴:特記事項なし.現病歴:検診の胃X線造影検査で異常を指摘されたため,当科へ紹介され受診となった.来院時身体所見:身長169.6cm,体重69.5kg.腹部は平坦・軟で,圧痛・自発痛なし.

Case 14

著者: 森山智彦 ,   梅野淳嗣 ,   藤原美奈子

ページ範囲:P.460 - P.463

臨床情報 
30歳代,女性.主訴は全身倦怠感.家族歴に特記事項なし.10年前に貧血を指摘され,鉄剤を投与されていた.5年前の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で胃に多発ポリープを認め,大部分のポリープを内視鏡的切除された.その後,他院で受けたEGDで再び胃病変を指摘されたため,当院へ紹介され受診となった.採血でHb 10.9g/dl,Fe 54μg/dlと軽度の鉄欠乏性貧血に加え,TPとAlbはそれぞれ4.8g/dl,3.1g/dlで,いずれも低値であった.なお,消化管X線造影検査ならびに内視鏡検査で,胃以外の消化管には異常を認めなかった.

十二指腸 8 Cases

Case 1

著者: 辻重継 ,   湊宏 ,   土山寿志

ページ範囲:P.465 - P.467

臨床情報 
80歳代,女性.主訴はなく,検診の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で,十二指腸下行部に異常を指摘されたため,当院へ紹介され受診となった.前医では生検は施行されていない.EGD像を示す(Fig.1,2).

Case 2

著者: 諏訪哲也 ,   小野裕之

ページ範囲:P.468 - P.471

臨床情報 
80歳代,男性.十二指腸腫瘍に対する治療歴はない.H. pylori(Helicobacter pylori)除菌歴はなく,抗H. pylori-IgG抗体4U/ml,腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)は正常範囲内であった.主訴はなく,前医での定期的な上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で十二指腸球部に不整な隆起性病変を指摘された.精査加療目的のため,6月に当院へ紹介され受診となり,EGDを施行した.

Case 3

著者: 鳥谷洋右 ,   菅井有 ,   松本主之

ページ範囲:P.472 - P.475

臨床情報 
60歳代,男性.40歳代時に食道平滑筋腫に対して外科的切除術,60歳代時に脳梗塞の既往あり.嘔気,黒色便を主訴に救急外来を受診した.緊急上部消化管内視鏡検査で十二指腸に異常を認めたため,精査目的に当科へ紹介され受診となった.

Case 4

著者: 吉永繁高 ,   宮部美圭 ,   関根茂樹

ページ範囲:P.476 - P.479

臨床情報 
70歳代,女性.主訴なし.既往歴に特記事項なし.検診の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて十二指腸球部に病変を指摘された.

Case 5

著者: 清森亮祐 ,   蔵原晃一 ,   大城由美

ページ範囲:P.480 - P.484

臨床情報 
50歳代,女性.心窩部痛の精査目的に前医で施行した上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で十二指腸球部に病変を認め,精査加療目的に当科へ紹介され受診となった.

Case 6

著者: 小林広幸

ページ範囲:P.485 - P.487

臨床情報 
40歳代,女性.貧血(Hb 9.8g/dl)のため,精査目的に当院へ紹介され受診となった.既往歴は特記事項なし.

Case 7

著者: 水江龍太郎 ,   蔵原晃一 ,   大城由美

ページ範囲:P.488 - P.491

臨床情報 
70歳代,男性.主訴は体重減少,腹部膨満.半年前から顕著な全身倦怠感と体重減少(−15kg/半年)を認め,さらに1か月前より腹部膨満が出現したため,精査目的に当科へ紹介され受診となった.血液検査では軽度の貧血と炎症反応上昇を認めるのみで,その他,腫瘍マーカーを含めて異常所見を認めなかった.

Case 8

著者: 梁井俊一 ,   菅井有 ,   松本主之

ページ範囲:P.492 - P.495

臨床情報 
60歳代,男性.スクリーニング目的の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で十二指腸病変を指摘された.上部消化管X線造影検査,EGD,小腸内視鏡検査による精査を行った.

小腸 7 Cases

Case 1

著者: 壷井章克 ,   岡志郎 ,   田中信治

ページ範囲:P.496 - P.499

臨床情報 
40歳代,男性.主訴は嘔気・嘔吐.既往歴は特記事項なく,服薬歴はない.家族歴にも特記事項は認めない.20XX年8月に便潜血陽性を指摘され,近医で大腸内視鏡検査を施行されたが異常を認めなかった.9月初旬より嘔吐を繰り返すようになり,近医で上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行されたが異常を認めなかった.その後も食欲不振・嘔気が持続し,11月に近医を受診し,CTを撮影し当科へ紹介され受診となった.

Case 2

著者: 石田夏樹 ,   大澤恵 ,   杉本健

ページ範囲:P.500 - P.503

臨床情報 
20歳代,男性.主訴は血便.既往歴は特記事項なし.X−1年に一過性の腹部正中の鈍痛と血便を認めたが,精査は希望しなかったため行わなかった.X年に同様の腹部鈍痛と血便が出現し,精査加療のため当院へ入院となった.造影CT,上・下部消化管内視鏡検査を行うも出血源を同定できず,小腸カプセル内視鏡検査,経口的および経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査(double-balloon enteroscopy ; DBE)を行った.

Case 3

著者: 田丸智子 ,   矢野智則 ,   仁木利郎

ページ範囲:P.504 - P.507

臨床情報 
60歳代,男性.主訴はなし.十二指腸潰瘍に対する開腹手術歴あり.20XX年に膀胱癌の手術予定であったが,術前のCTで偶発的に回腸重積を指摘され,当科へ紹介され受診となった.精査加療のため,小腸内視鏡検査を行った.

Case 4

著者: 大宮直木

ページ範囲:P.508 - P.512

臨床情報 
[症例1] 60代,女性.主訴:黒色便.既往歴:なし.201X年7月に黒色便が1回あり,同年8月の検診の採血でHb 7.6g/dlの貧血を指摘された.近医で上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD),大腸内視鏡検査が施行されたが異常はなく,腹部CTで右卵巣腫瘍と診断された.同年11月に卵巣腫瘍切除術が予定されるも,同年10月より黒色便再発,Hb 10.4g/dlと再び貧血が進行したため,精査目的に当院へ紹介され受診となった.小腸カプセル内視鏡は異常なし.経口的ダブルバルーン小腸内視鏡(double-balloon enteroscopy ; DBE),小腸X線造影検査を行った.
[症例2] 70代,女性.主訴:血便.既往歴・既存症:神経線維腫症I型(Recklinghausen病),脂質異常症.201X年2月に血便があり,近医の採血でHb 10.4g/dlの貧血を指摘された.EGDは異常なし,大腸内視鏡検査では多発憩室,腹部CTで小腸腫瘍が疑われ,精査目的に当院へ紹介され受診となった.小腸カプセル内視鏡検査,経肛門的DBE,選択的小腸X線造影検査を行った.

Case 5

著者: 石橋英樹 ,   二村聡 ,   平井郁仁

ページ範囲:P.514 - P.517

臨床情報 
40歳代,女性.200X年に,慢性下痢,体重減少(6kg/3か月)の精査目的のため当科へ紹介され受診となった.入院時血液検査所見では,低蛋白血症(4.4g/dl),低アルブミン血症(2.9g/dl),可溶性IL-2Rの上昇(1,419U/ml)を認めた.

Case 6

著者: 川崎啓祐 ,   梅野淳嗣 ,   鳥巣剛弘

ページ範囲:P.518 - P.521

臨床情報 
70歳代,女性.主訴:腹痛.既往歴:40歳代時にCrohn病,小腸狭窄(回腸部分切除),50歳代時に子宮頸癌(子宮全摘術+放射線治療),小腸癌(回腸部分切除+化学療法).70歳代時に硬膜下血腫(血腫除去術).家族歴:特記事項なし.現病歴:1981年に小腸型Crohn病と診断され以降在宅経腸栄養療法を行っていた.2015年12月より腹痛を認め近医での腹部造影CTで上部小腸に壁肥厚を指摘されたため当科へ紹介され入院となった.

Case 7

著者: 梅野淳嗣 ,   川崎啓祐 ,   川床慎一郎

ページ範囲:P.522 - P.525

臨床情報 
60歳代,男性.主訴は右下腹部痛.既往歴は,糖尿病,陳旧性脳梗塞.2013年頃から時々右下腹部痛を認めていた.2015年6月に近医で施行された下部消化管内視鏡検査で回盲弁および終末回腸に異常を指摘された.精査加療目的で同年8月に当科へ紹介され受診となり,経口小腸X線造影検査と下部消化管内視鏡検査を行った.2013年頃は口内炎を時々認めていたが当科受診時には認めなかった.発熱,陰部潰瘍はなく,非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs ; NSAIDs)の内服歴もない.血液検査所見では,WBC 12,210/μl,Hb 12.0g/dl,Plt 32.5万/μl,TP 6.9g/dl,Alb 3.6g/dl,CRP 1.75mg/dl,ESR 58mm/hrであった.

大腸 13 Cases

Case 1

著者: 吉田直久 ,   井上健 ,   森永友紀子

ページ範囲:P.526 - P.529

臨床情報 
50歳代,男性.主訴は便潜血陽性.既往歴に特記すべき事項なし.現病歴は20XX年に検診にて便潜血陽性を指摘され他院で大腸内視鏡検査を施行された.横行結腸に腫瘍性病変を指摘されたため,当院へ紹介され受診となった.精査加療目的に拡大内視鏡検査を行った.

Case 2

著者: 入口陽介 ,   山村彰彦

ページ範囲:P.530 - P.533

臨床情報 
50歳代,女性.主訴:便秘.既往歴:虫垂炎手術(10歳代前半時).現病歴:大腸がん検診で便潜血検査陽性を指摘されたため,精査目的で当センターを受診し,大腸内視鏡検査を受けたところ,S状結腸にポリープを指摘された(Fig.1,2).

Case 3

著者: 泉敦子 ,   斎藤彰一 ,   高松学

ページ範囲:P.534 - P.537

臨床情報 
[症例1]70歳代,女性.便潜血陽性に対する大腸内視鏡検査で直腸病変を指摘されたため,精査加療目的に当院へ紹介され受診となった.
[症例2]60歳代,男性.血便の精査目的で行った大腸内視鏡検査で直腸病変を指摘されたため,精査加療目的に当院へ紹介され受診となった.

Case 4

著者: 鴫田賢次郎 ,   永田信二

ページ範囲:P.538 - P.541

臨床情報 
80歳代,男性.主訴は特になし.既往歴は特記事項なし.近医で便潜血陽性を指摘され,精査加療目的に紹介され受診となった.大腸内視鏡検査を施行したところ,S状結腸に病変を指摘された.

Case 5

著者: 園田隆賀 ,   庄野孝 ,   田中靖人

ページ範囲:P.543 - P.545

臨床情報 
80歳代,女性.主訴は便秘.精査加療目的に消化器内科を受診した.既往歴は高血圧症と陳旧性脳梗塞.腹部に圧痛を認め,左下腹部に腫瘤を触知した.大腸内視鏡検査および注腸X線造影検査を施行した.

Case 6

著者: 山野泰穂 ,   吉井新二

ページ範囲:P.546 - P.549

臨床情報 
70歳代,男性.主訴はなし.糖尿病,脂質異常症にて前医通院加療中であったが,スクリーニングとして実施した大腸内視鏡検査にて盲腸に異常を指摘され,精査加療目的に当科受診となった.

Case 7

著者: 萬春花 ,   松下弘雄 ,   加藤文一朗

ページ範囲:P.550 - P.553

臨床情報 
60歳代,女性.主訴はなし.検査にて異常を指摘.特記すべき既往歴や服薬歴はなし.近医での大腸内視鏡検査(colonoscopy ; CS)で下部直腸(Rb)に隆起性病変を指摘された.精査加療目的に当科へ紹介され受診となり,CSを行った.

Case 8

著者: 八坂達尚 ,   久部高司 ,   二村聡

ページ範囲:P.555 - P.557

臨床情報 
50歳代,男性.20XX年10月に便潜血陽性の精査目的で施行した全大腸内視鏡検査でS状結腸に病変を指摘されたため,当院へ紹介され受診となった.

Case 9

著者: 吉井新二

ページ範囲:P.558 - P.561

臨床情報 
50歳代,男性.既往歴,家族歴に特記事項なし.検診で便潜血反応陽性を指摘されたため受診となった.大腸内視鏡検査にて盲腸に病変を指摘された.身体所見に異常はなく,血液・生化学所見では,特記すべき異常所見を認めなかった.

Case 10

著者: 山崎健路 ,   九嶋亮治

ページ範囲:P.562 - P.566

臨床情報 
60歳代,男性.主訴はなし.検診で便潜血反応陽性を指摘され他院で大腸内視鏡検査を施行.右側結腸に病変を指摘され精査のため20XY年,当科へ紹介され受診となった.既往歴:糖尿病,脂質異常症.内服薬:アログリプチン,ピオグリタゾン,ダパグリフロジン,ロスバスタチン.

Case 11

著者: 芥川剛至 ,   江﨑幹宏

ページ範囲:P.567 - P.569

臨床情報 
70歳代,男性.主訴は排便後の腹痛,下血.既往歴として弓部大動脈瘤に対して人工血管置換術後.慢性腎臓病の急性増悪と高カリウム血症がみられ,それらに対する加療目的に当院に緊急入院となった.入院後に腹痛,下血が出現したため,第2病日に当科へコンサルトとなった.腹部CT後に下部消化管内視鏡検査を行う方針となった.

Case 12

著者: 赤坂理三郎 ,   松本主之

ページ範囲:P.570 - P.573

臨床情報 
70歳代,女性.主訴は血便.既往歴に特記事項なく,服薬歴もなし.20XX年6月下旬から血便を自覚し近医を受診した.下部消化管内視鏡検査で直腸肛門部に異常を指摘された.精査加療のため同年7月に当科へ紹介となり,下部消化管X線造影検査,下部消化管内視鏡検査を行った.

Case 13

著者: 清水誠治

ページ範囲:P.575 - P.577

臨床情報 
60歳代,女性.主訴は下痢.生来健康で基礎疾患もなし.2か月前から下痢を来していたが,徐々に増加し,1日に4〜5回の水様便がみられるようになり精査希望で受診した.血液一般,生化学検査には異常なく,CRPは0.5mg/dlであった.便培養で病原菌は発育せず,塗抹鏡検でも異常はみられなかった.

全消化管 3 Cases

Case 1

著者: 卜部祐司 ,   岡志郎 ,   田中信治

ページ範囲:P.578 - P.581

臨床情報 
70歳代,男性.主訴は便潜血.既往歴は特記事項なし.家族歴は父親が食道癌,母親が子宮体癌と大腸癌,姉が乳癌.20XX年11月に近医にて上記主訴の精査目的で大腸内視鏡検査(colonoscopy ; CS)を施行された.横行結腸に潰瘍を伴う隆起性病変を,全大腸内に20個以上の扁平隆起性病変を指摘された.同年12月に精査加療目的で当科へ紹介され受診となり,精査CSと注腸X線造影検査を施行した(Fig.1〜4).

Case 2

著者: 我妻康平 ,   柴田泰洋 ,   仲瀬裕志

ページ範囲:P.582 - P.585

臨床情報 
80歳代,女性.主訴は発熱,下痢,腹痛.既往歴は甲状腺機能低下症.20XX年12月に発熱や左膝の発赤と腫脹に対し,前医にて抗菌薬治療やステロイド治療が行われた.治療中に下痢が出現し,大腸内視鏡検査(colonoscopy ; CS)を行った.確定診断に至らないものの,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)を考え,5-ASA(5-aminosalicylic acid)製剤が開始となり,下痢は改善傾向となった.20XX+1年6月に薬剤性皮疹がみられたため,5-ASA製剤を中止した.同年10月に37℃台の発熱,下痢の再燃,腹部全体の腹痛を認めた.血液検査では,WBC 6,100/μl,Hb 10.9g/dl,CRP 8.11mg/dl,血清アミロイドA蛋白(serum amyloid A protein ; SAA)962.4μg/mlであった.前医にてCSの再検(Fig.1)と腹部単純CTを行った(Fig.2).

Case 3

著者: 北川大貴 ,   竹内洋司 ,   藤澤文絵

ページ範囲:P.586 - P.590

臨床情報 
20歳代,男性.職域検診で便潜血陽性を指摘されたため,20XX−3年に前医を受診した.前医の上・下部消化管内視鏡検査で胃および大腸に多発ポリープを指摘され,精査加療目的に当科へ紹介され受診となった.家族歴に特記すべき事項はない.当科での上・下部消化管内視鏡像を示す(Fig.1〜3).

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目次

ページ範囲:P.368 - P.369

欧文目次

ページ範囲:P.370 - P.370

バックナンバー・定期購読のご案内

ページ範囲:P.464 - P.464

次号予告

ページ範囲:P.592 - P.592

編集後記

著者: 八尾建史

ページ範囲:P.593 - P.593

 「胃と腸」2023年4月増大号(58巻4号)をお届けする.本号は,「『胃と腸』式 読影問題集2023 基本と応用—考える画像診断が身につく」というタイトルのとおり,問題集の構成となっている.本誌では2021年(56巻9号)に,「『胃と腸』式 読影問題集」と題し,読者には,まるで早期胃癌研究会で読影者として指名された気持ちになって各問題に取り組んでいただけるような特集を企画した.この企画は本誌刊行以来,初の試みであったが,幸いなことに好評を博した.本誌ならではの思考過程を重視した結果と考えられる.そこで,「考える画像診断」能力を鍛える問題集の続編として本号を企画した.
 本号で取り上げる問題は「典型例の読影」を前提としているが,最終診断に至るまでの思考過程はエキスパートたちが日々実践している診断プロセスそのものであり,内容的にはかなり濃密である.そのため,初学者にとってもエキスパートにとっても読影・診断能力の向上に直結する内容になることが期待される.この点を踏まえて,エキスパートの先生方には良質な問題と解説を丁寧に作成していただくように依頼した.

奥付

ページ範囲:P.594 - P.594

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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