icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸58巻5号

2023年05月発行

文献概要

今月の主題 壁内局在からみた胃上皮下腫瘍の鑑別診断 主題症例

癌性リンパ管症を伴い上皮下腫瘍を形成した胃癌の1例

著者: 金田義弘1 入口陽介1 小田丈二1 依光展和1 冨野泰弘2 安藤早弥1 安川佳美1 神谷綾子1 霧生信明1 岸大輔1 山村彰彦3

所属機関: 1東京都立がん検診センター消化器内科 2東京都情報サービス産業健康保険組合東中野保健センター 3東京都立がん検診センター検査科

ページ範囲:P.663 - P.669

文献購入ページに移動
要旨●患者は70歳代,男性.健診でCEA高値を指摘され精査目的のため当科へ紹介され受診となった.EGDではSMT様隆起の肛門側に白色調の不整形陥凹を認め,0-IIa+IIc型早期胃癌と診断した.SMT様隆起のNBI拡大観察では,頂部粘膜の窩間部に不整な血管拡張・蛇行所見を認めたため生検を施行した.腺窩上皮直下の粘膜層に低分化腺癌を認めたため,胃全摘術を施行した.病理組織学的診断では,moderately differentiated tubular adenocarcinoma,pType 1,pT4a(SE),55×35×8mm,(tub2≫por),gastrointestinal type,HER2(0),intermediate,INFc,Ly1c,V1cであった.本症例は,原発巣である0-IIa+IIc型早期胃癌の形態を保ったまま上皮下に進展し,口側に癌性リンパ管症を伴って上皮下腫瘍を形成していた.SMT様隆起のNBI拡大観察から,腺窩上皮直下への癌の進展を診断できた症例を経験したので報告する.

参考文献

1)日本消化器内視鏡学会用語委員会(編).消化器内視鏡用語集,第5版.日本消化器内視鏡学会,2023
2)岩城智之,平澤大,長南明道,他.胃粘膜下腫瘍の通常内視鏡・超音波内視鏡診断.胃と腸 52:1283-1290, 2017
3)岩上裕吉,上堂文也,松浦倫子,他.上皮下発育悪性腫瘍の診断(NET,GIST,転移性胃癌).胃と腸 55:584-592, 2020
4)臼井健郎,山形知,青松和輝,他.形態変化を観察しえた粘膜下腫瘍様胃癌の1例.Gastroenterol Endosc 51:1135-1142, 2009
5)肱岡範,平田稔彦,横溝博,他.原発巣が粘膜下層に留まりながら広範な胃壁内癌性リンパ管症を呈した胃癌の1例.日消外会誌 36:1269-1274, 2003
6)清水宏,馬場保昌,武本憲重,他.広範なリンパ管侵襲を来したIIc型胃癌の1例.胃と腸 23:1147-1152, 1988
7)吉村大輔,松本拓也,中島明彦,他.癌性リンパ管症により周囲に特異な赤色・白色斑の集簇を認めた1型胃癌の1例.胃と腸 43:111-117, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?