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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸58巻6号

2023年06月発行

雑誌目次

今月の主題 分類不能腸炎(IBDU)の現状と将来展望 序説

分類不能腸炎(IBDU)の現状と将来展望

著者: 平井郁仁 ,   芦塚伸也 ,   久能宣昭

ページ範囲:P.709 - P.712

はじめに
 腸の炎症性疾患は原因や誘因が多岐にわたるため,しばしば確定診断が困難となる.しかし,最終的に診断できない症例に統一された呼称や定義は定まっていないのが現状である.本主題では“分類不能腸炎(IBDU)”として取り上げられているが,筆者は分類不能腸炎=inflammatory bowel disease unclassified(以下,IBDU)とは考えていない.
 本稿では私見を含めて分類不能腸炎とIBDUの概念,定義,頻度や診断および経過観察中の留意点などについて述べたい.

主題

病理組織学的所見からみた分類不能腸炎(IC/IBDU)の特徴

著者: 下田将之 ,   中島真 ,   岩男泰

ページ範囲:P.713 - P.724

要旨●IC(indeterminate colitis)/IBDU(inflammatory bowel disease unclassified)は潰瘍性大腸炎とCrohn病の鑑別診断困難症例とされるが,これらの疾患概念や定義は時代とともに変遷しており,その病理学的な特徴についても明確になっていないのが現状である.したがって,ICの病理診断においては,各種鑑別疾患やさまざまな修飾因子を考慮し,臨床医との密な連携のもと,慎重な診断を行っていく必要がある.本稿では,潰瘍性大腸炎とCrohn病の典型的な肉眼像・病理組織像やその鑑別疾患,修飾因子について概説するとともに,これまで自施設において経験したICと考えられる症例を提示し,考察を加える.

内視鏡所見からみたinflammatory bowel disease unclassified(IBDU)の特徴

著者: 清水誠治 ,   富岡秀夫 ,   小木曽聖 ,   高山峻 ,   石破博 ,   上島浩一 ,   横溝千尋 ,   眞嵜武 ,   石田英和

ページ範囲:P.725 - P.733

要旨●IBD(inflammatory bowel disease)であっても潰瘍性大腸炎(UC)とCrohn病(CD)の鑑別が臨床的に困難な場合に“IBDU(inflammatory bowel disease unclassified)”の名称が用いられている.IBDUは経過中にかなりの割合でUCまたはCDに診断名が変更されることから暫定的名称と考えられてきた.最近ではIBDUの中に新たなサブタイプが含まれるという考え方に変わってきている.しかしIBDUの明確な診断基準は存在せず,画像が提示された症例報告は乏しいのが実情である.本稿では本邦における報告例と自験例における画像所見をまとめ,IBDUの画像的特徴のパターンについて考察した.加えてESPGHANの小児IBD診断基準であるPorto criteriaについても紹介した.

潰瘍性大腸炎確定診断例にみられる非典型病変とその経過—潰瘍性大腸炎関連の胃十二指腸病変および小腸病変

著者: 久部高司 ,   宇野駿太郎 ,   三雲博行 ,   髙橋篤史 ,   金城健 ,   安川重義 ,   古賀章浩 ,   髙津典孝 ,   二村聡 ,   植木敏晴 ,   八尾建史

ページ範囲:P.735 - P.746

要旨●潰瘍性大腸炎(UC)の非典型病変としてUC関連胃十二指腸病変や小腸病変が知られるが,その臨床経過については不明である.今回,大腸全摘術が施行されていない症例におけるUC関連胃十二指腸病変および小腸病変の長期的な臨床経過について検討した.胃十二指腸病変は73.7%(14/19)が内視鏡的寛解に至り,病変部位別では胃病変の75.0%(9/12),十二指腸病変の72.2%(13/18)が寛解に至った.胃十二指腸病変の60か月および120か月後の累積寛解維持率は70%であった.小腸病変症例では胃十二指腸病変の合併を71.4%(5/7)に認め,小腸病変の経過が追えた4例は全例内視鏡的寛解に至った.ステロイドや5-ASAなどに対する反応は良好で,UCの寛解が維持できれば胃十二指腸病変および小腸病変も寛解が維持されたが,診断後にUC難治のために大腸全摘術が施行されたのは,それぞれ14.3%(3/21)と28.6%(2/7)であった.対象症例の経過中にUCの診断が変更となった症例はなく,今後さらに形態学的特徴や臨床経過が明らかとなれば,inflammatory bowel disease unclassified症例における診断の補助となる可能性も示唆される.

Crohn病確定診断例にみられる非定型病変とその経過

著者: 横山薫 ,   原田洋平 ,   伊藤隆士 ,   金澤潤 ,   別當朋広 ,   池原久朝 ,   小林清典 ,   草野央

ページ範囲:P.747 - P.760

要旨●当科で経験したCrohn病(CD)の潰瘍性大腸炎(UC)類似病変合併例の特徴について検討した.その頻度は28%と以前より高率で,IBD症例数の増加やIBDU(IBD unclassified),非定型病変に詳細な観察が行われていることなどが理由と考えられた.UC類似病変の出現部位は左側結腸に多く認められ,経過中に出現部位が変化する症例も含まれた.CDの診断では,小腸の縦走潰瘍や不整形〜類円形潰瘍,肛門病変,生検病理組織学的所見における非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が有用であった.もう一つの非定型病変として,アフタ性病変のみからCD典型例へ進展した症例を提示した.アフタ性病変のみの症例では大腸内視鏡検査のみで終わらせず,上部消化管の検索や経過観察に加え,病変が進展する可能性と経時的な画像検査の必要性を患者に説明する必要がある.

希少疾患:monogenic IBDにおける臨床的特徴

著者: 竹内一朗 ,   新井勝大

ページ範囲:P.761 - P.772

要旨●小児の炎症性腸疾患(IBD),特に超早期発症型炎症性腸疾患は,成人と比較して分類不能型IBDと診断される割合が高い不均一な集団であることが知られている.近年の遺伝学の発展により単一遺伝子異常によって腸炎を発症する“monogenic IBD”として診断される患者の存在が明らかとなり,現在までに75以上の原因遺伝子が報告されている.IBDの標準治療である免疫抑制薬が禁忌となる疾患や,造血幹細胞移植が有効な疾患も含まれ,早期診断と適切な治療介入が予後の改善につながるケースもある.本稿では,当センターでmonogenic IBDの診断に至った症例の臨床的特徴に関して,実際の症例を提示しながら解説する.

主題研究

非特異性多発性小腸潰瘍症診断における尿中プロスタグランジンE主要代謝産物(PGE-MUM)の有用性

著者: 松野雄一 ,   梅野淳嗣 ,   鳥巣剛弘 ,   冬野雄太 ,   岡本康治 ,   安川重義 ,   平井郁仁 ,   渡辺憲治 ,   細江直樹 ,   河内修司 ,   蔵原晃一 ,   八尾恒良 ,   松本主之 ,   江﨑幹宏

ページ範囲:P.773 - P.781

要旨●非特異性多発性小腸潰瘍症(CEAS)は持続的な出血に起因する慢性の貧血と低蛋白血症を特徴とする比較的まれな遺伝性疾患である.小腸に多発潰瘍を来すためCrohn病(CD)との鑑別が必要であるが,全例で遺伝学的検査を行うことは現実的でないため,簡便かつ非侵襲的なスクリーニング検査法が必要とされている.今回筆者らは,CEASとCDの鑑別における尿中プロスタグランジンE主要代謝産物(PGE-MUM)濃度の有用性について検討した.CEAS 20例とCD 98例を対象とした.PGE-MUM濃度はCD患者と比較しCEAS患者において有意に高値であった(中央値102.7 vs 27.9μg/g×Cre,p<0.0001).ROC解析では至適カットオフ値は48.9μg/g×Creと算出され,その際の感度は95.0%,特異度は79.6%であった.PGE-MUMは,CEASとCDの鑑別において有用な検査であると考えられた.

ノート

炎症性腸疾患における血清学的バイオマーカー診断の現状

著者: 角田洋一 ,   岡崎創司 ,   澤橋基 ,   猪股優志 ,   下山雄丞 ,   内藤健夫 ,   諸井林太郎 ,   志賀永嗣 ,   木内喜孝 ,   白井剛志 ,   藤井博司 ,   正宗淳

ページ範囲:P.783 - P.788

要旨●近年,抗インテグリンαvβ6抗体および抗EPCR抗体という潰瘍性大腸炎の診断に有用な2つの血清学的バイオマーカーが日本から報告された.いずれも潰瘍性大腸炎に対して高い感度・特異度を示す他,欧米人でも同様の相関が確認され,臨床応用へ向けた取り組みが進められている.分類不能腸炎ではこれら2つの抗体が示す陽性・陰性のパターンが症例によって異なり,各症例の病態把握や治療選択に役立つ可能性がある.このように,新たな血清学的バイオマーカーは多彩な病態を示す炎症性腸疾患患者の層別化や個別化医療の実践,新規治療開発につながる可能性があり,今後のさらなる研究開発が期待される.

主題症例

経過中に大腸型Crohn病から潰瘍性大腸炎に診断が変更になったIBDUの1例

著者: 細江直樹 ,   岩男泰 ,   東條杏奈 ,   林由紀恵 ,   吉松裕介 ,   杉本真也 ,   清原裕貴 ,   三上洋平 ,   筋野智久 ,   髙林馨 ,   緒方晴彦 ,   川井田みほ ,   金井隆典

ページ範囲:P.789 - P.794

要旨●患者は20歳代,男性.腹痛,下痢を主訴に受診した.初診時に著明な貧血を呈しており,大腸内視鏡検査で下行結腸〜上行結腸にかけて縦走潰瘍,上行結腸に敷石像を認め大腸型CDと診断され,加療を受け軽快していた.約1年後に血便を認めるようになり大腸内視鏡の再検を受けた.直腸〜下行結腸のhaustraは消失し,びまん性・連続性に発赤粗糙・細顆粒状粘膜を認め,UCに典型的な所見を呈していた.横行結腸以深の血管透見像は良好で肉眼的には正常であったが,上行結腸の生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が検出され,IBDUと診断した.その後は肉芽腫が検出されることはなく,UCに矛盾しない臨床像で現在まで経過している.

Crohn病・潰瘍性大腸炎両疾患の内視鏡所見が異時性にみられたIBDUの1例

著者: 川崎啓祐 ,   梅野淳嗣 ,   川床慎一郎 ,   平野敦士 ,   谷口義章 ,   加来寿光 ,   岡本康治 ,   柿添梢 ,   長末智寛 ,   松野雄一 ,   冬野雄太 ,   藤岡審 ,   森山智彦 ,   檜沢一興 ,   鳥巣剛弘

ページ範囲:P.795 - P.802

要旨●患者は10歳代,男性.主訴は腹痛,下痢.大腸内視鏡検査で上行結腸から下行結腸にかけて粘膜浮腫と縦走潰瘍を,S状結腸には小潰瘍から不整形潰瘍を認めた.Crohn病と診断しインフリキシマブを導入し,アザチオプリンの投与を行うものの寛解維持が困難であり,経過観察の大腸内視鏡検査では終末回腸はやや粗糙で,また直腸から連続性に全大腸に粗糙粘膜,びらん,血管透見像の消失を認めた.回腸からの生検では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を,大腸からの生検では炎症細胞浸潤,陰窩炎,陰窩膿瘍および杯細胞の減少を認めた.異時性にCrohn病,潰瘍性大腸炎両者の内視鏡所見を,同時性に両者の病理組織像を認めたことから,IBDUと診断した.青黛の内服投与で寛解導入され,3年後の大腸内視鏡検査では粘膜治癒が確認された.

潰瘍性大腸炎の治療経過中にIBDUと診断された1例

著者: 河本亜美 ,   木脇祐子 ,   大塚和朗

ページ範囲:P.803 - P.807

要旨●分類不能腸炎(IBDU)症例の中では当初は潰瘍性大腸炎またはCrohn病と診断されるものの,治療経過中にもう一方の疾患の特徴を併発し,IBDUと判断される症例がある.筆者らは若年で潰瘍性大腸炎を発症し,経過中に肛門病変の合併がみられ,次第に大腸型Crohn病として特徴的な所見を呈した症例を経験した.IBDUと診断したことで,寛解導入療法として抗TNFα抗体製剤の倍量投与を行うことができた.適切な診断は薬剤選択を含めた治療方針決定に関わるため,治療経過中であっても画像所見の変化に注意することが重要と考える.

経過中に潰瘍性大腸炎とCrohn病の内視鏡的所見像を有し診断困難であった家族性地中海熱の1例

著者: 横山陽子 ,   池ノ内真衣子 ,   藤平雄太郎 ,   志水和麻 ,   賀来浩二 ,   八木聡一 ,   佐藤寿行 ,   河合幹夫 ,   上小鶴孝二 ,   堀和敏 ,   渡辺憲治 ,   廣田誠一 ,   新﨑信一郎

ページ範囲:P.809 - P.814

要旨●患者は70歳代後半,女性.下痢と血便で発症し,大腸内視鏡所見では直腸〜S状結腸にかけて連続性に粘膜粗糙と浮腫を認め潰瘍性大腸炎(UC)を疑う粘膜炎症であったが,EGDで,胃体部大彎に竹の節状外観を認めCrohn病(CD)に典型的な粘膜所見であった.大腸病変からはUCを疑ったが,上部消化管病変の粘膜炎症と直腸のびらんに非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められ,診断に難渋したが高齢発症のCDと診断し経過をみていた.経過中に出現した右股関節痛と微熱といった臨床症状と,粘膜炎症が軽症であるにもかかわらず,5-ASAや栄養療法,顆粒球吸着療法など既存治療の有効性が低いことから,家族性地中海熱(FMF)を疑い,コルヒチンの投与を行った.治療開始後から関節痛と微熱,下痢が改善傾向となり,CRPも陰性化した.その後,MEFV exon 2の変異を認め,FMFと診断した.CDからFMFと診断しえた症例を報告する.

IBDUの経過観察中に大腸癌を合併したindeterminate colitisの1例

著者: 梁井俊一 ,   久米井智 ,   永塚真 ,   鳥谷洋右 ,   上杉憲幸 ,   菅井有 ,   八重樫瑞典 ,   城戸治 ,   松本主之

ページ範囲:P.815 - P.821

要旨●患者は70歳代,男性.約11年前に前医で貧血と下痢を主訴に精査を受け,深部大腸のIBDUと診断され,サラゾスルファピリジンの投与を受けていた.今回,下行結腸に2か所の狭窄を指摘され,セカンド・オピニオンを求めて当科を受診した.狭窄に対してバルーン拡張を行い,深部大腸を観察したところ,寛解状態の上行結腸肝彎曲部に2型進行癌が併存していた.腹腔鏡下結腸亜全摘術が施行され,病理組織学的にはICに合併したStage IIbの進行大腸癌と診断された.術後2年間,再発なく経過している.

早期胃癌研究会症例

idiopathic myointimal hyperplasia of mesenteric veinsの1例

著者: 郷内貴弘 ,   鳥谷洋右 ,   川崎啓祐 ,   梁井俊一 ,   上杉憲幸 ,   菅井有 ,   松本主之

ページ範囲:P.823 - P.831

要旨●患者は60歳代,男性.腹部膨満感と粘液便を主訴に前医を受診し,腸間膜脂肪織炎の診断でステロイド治療を受けるも改善なく経過したため,6か月後に当科へ紹介され受診となった.注腸X線造影検査では下行結腸からS状結腸にかけて長い管状狭窄と拡張不良がみられ,遠位大腸に拇指圧痕像を伴っていた.下部消化管内視鏡検査では下行結腸からS状結腸を中心に全周性区域性の潰瘍と内腔の狭小化を認めた.以上の画像所見と緩徐な臨床経過から,静脈性の虚血性腸病変を考え,腹腔鏡補助下Hartmann手術および横行結腸人工肛門造設術を行った.切除標本の病理組織学的所見では,上皮欠損部に一致する粘膜下層および漿膜下の静脈壁に著明な肥厚と内腔の閉塞がみられたことから,IMHMV(idiopathic myointimal hyperplasia of mesenteric veins)と診断した.

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目次

ページ範囲:P.707 - P.707

欧文目次

ページ範囲:P.708 - P.708

バックナンバー・定期購読のご案内

ページ範囲:P.706 - P.706

「今月の症例」症例募集

ページ範囲:P.746 - P.746

早期胃癌研究会 症例募集

ページ範囲:P.831 - P.831

次号予告

ページ範囲:P.834 - P.834

編集後記

著者: 江﨑幹宏

ページ範囲:P.835 - P.835

 近年の遺伝子解析技術の進歩に伴い,これまで分類不能腸炎といった枠組みに分類せざるをえなかった(広義の)炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)の中には,疾患発症あるいは疾患修飾に単一遺伝子におけるバリアントが関与するようなmonogenic IBDやMEFV遺伝子関連腸炎などが含まれることが明らかとなってきた.さらには,疾患特異的バイオマーカーの探索が進むにつれ,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)やCrohn病(Crohn's disease ; CD)といった狭義のIBDにおいても,生検や画像診断などの所見ではIBDU(IBD unclassified)に分類せざるをえない症例がバイオマーカーを用いることによりUC,CDのいずれかに分類しうる可能性も出てきた.このようなIBD診断における近年の進歩を踏まえて,本特集号ではIBDUの現状に加えて,やむなくIBDUに区分する段階で鑑別すべき他疾患の特徴を網羅することを目的とした.本特集号に掲載されている各論文を通読いただければ,本特集号の目的が十分達せられていることがおわかりいただけよう.
 ところで,今回の特集号のタイトルをご覧になった読者の中には,序説で平井郁仁先生が指摘されているように違和感を覚えた方々も少なからずおられるものと推察する.すなわち,分類不能腸炎は厳密にはIBDU,IC(indeterminate colitis)のいずれともイコールではないことである.従来,術後切除標本の病理組織学的な検索を行ってもUC,CDの確定診断が得られない症例はICの名称が使用されてきた.しかしながら,UC,CDの確定診断が得られない症例には手術が行われず内科治療が継続される症例のほうがむしろ多く,これらの症例に対してもICの名称が使用されてきたため,本来のICの定義と齟齬を生じる結果を招くこととなった.このような背景から,内視鏡や生検を含めた臨床像からUC,CDの確定診断が得られず,かつ大腸非切除症例には新たにIBDUの呼称が用いられるようになった.一方,分類不能腸炎といった和文呼称は,狭義のIBDを念頭に置いた場合と,腸型Behçet病や腸結核なども含めた広義のIBDを念頭に置いた際にいずれの疾患概念にも当てはまらない症例に用いる場合とがある.逆に,分類不能腸炎にIC,IBDUのいずれも用いずに英語表記をするのであればunclassified(entero)-colitisとなるであろうが,あまり耳慣れない英語表記を用いることでかえって混乱を招く可能性,本特集号の主旨とタイトルにズレを生じる可能性を危惧した.結果として,本特集号の企画小委員である筆者自身も分類不能腸炎=IBDUと表記することにかなりの違和感を感じつつも,適切な和文呼称がないためやむなくこのような表題にしてしまった.IBDU,ICの厳密な定義をご存知の読者の方でタイトルに不満を感じられた方がおられたのであればこの場を借りてお詫び申し上げる.IBDUあるいはICを的確に区分できる和文表記を決定することは今後の課題であろう.

奥付

ページ範囲:P.836 - P.836

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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